私のオピニオン
上野千鶴子

社会学者、認定NPO 法人ウィメンズ アクション ネットワーク理事長

人口減少時代に地域社会や組織を活性化させる鍵は、「女性があらゆる場面で意思決定権を持ち、活躍できる環境を整えること」と指摘する上野千鶴子さん。JAでの理解と後押しを期待しています。

女性リーダーが少ないのは、能力を育て、発揮するチャンスに恵まれなかっただけです。

進捗が遅い女性の社会参画

 地域社会や組織の活性化に女性の活躍が不可欠なことは、あらためて言うまでもないでしょう。では、「202030(にいまるにいまるさんまる)」という言葉を知っていますか。社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的地位に女性が占める割合を、少なくとも30%程度とする目標です。2003年に内閣府の男女共同参画推進本部が決定し、国を挙げて取り組むこととなりました。
 当時は16年あれば何とかなると思われていましたが、進捗しんちょく状況は惨憺さんたんたる状態です。衆議院議員が7.9%(2012年)、参議院議員18.2%(同)、本省課室長相当職以上の国家公務員に至ってはわずか2.6%(同)です。民間企業(100人以上の課長職相当以上)ですら7.2%(2011年)です。農業分野でも、農業委員が5.7%(2011年)、JA役員に占める女性の割合は7.2%(2015年7月)です。全人口の半分は女性ということを考えれば目標値は50%であるべきなのに、30%という控えめの目標ですら達成できそうにありません。

地位が人材を育てる

 なぜ、女性のリーダーが育たないのでしょうか。理由のひとつは、人材、リーダーシップというものはポジションが育てるものですが、1985年の男女雇用機会均等法成立以降、ほとんどの女性はそのような機会に恵まれなかったことにあります。現在、リーダーシップを発揮して活躍している女性は、のしかかってくる重い“天井”を自力でこじ開けてきた人ばかり。いわばスーパーウーマンで、同じことを一般の女性に当てはめるのは無理があります。さらに、管理職になるための研修を受けてこなかった女性が突然管理職になり、円滑に業務がこなせなかったとき、「やっぱり女性は駄目だ」と受け止められてしまうのも問題です。
 一方で、多くの男性には、そうしたポジションに就くチャンスが与えられ、若い頃からメンター(指導者)が手取り足取り導いていきました。この差は非常に大きい。指導的地位に就く女性の割合は、意識的に増やしていくべきです。

女性の手に意思決定権を

 もうひとつ強調したいのは、さまざまな場面で、女性が意思決定権を持てるようになってほしいということです。
 日本では、「婦人部」などの名称で、本体に付属する女性に限定した組織がつくられてきました。女性たちは、そこでのびのびと活動しますが、男性により閉じ込められているとも言えるわけで、女性学では婦人科“ゲットー(ヨーロッパ諸都市内でユダヤ人が強制的に住まわされた居住地区)”とも呼ばれます。組織本体に対して女性が意思決定権を持っていなければ、活動への資源配分は少なくなってしまいます。活動範囲も男性の許す部分に限定されるでしょう。
 政治参加が少ないのも問題です。なぜ議員が少ないかと言えば、女性の立候補者が少ないから。女性が立候補しないのは、家庭内に抵抗勢力がいるからです。妻がやることは何にしても夫の許可が必要です。許可を求める範囲は場合によってはしゅうとしゅうとめ、親族にまで及びます。皆さん気付いていないかもしれませんが、女性が目立つのを押さえたり、足を引っ張ったりする原点が家庭の中にあるのです。
 ある男性は、妻が自宅で子育てサークルを開こうとしたのを聞いてやめさせようとしたそうです。近所に迷惑が掛かるとか、狭い自宅を公開するのはみっともないとかいうのが理由らしいのです。私には何が問題なのか分かりません。夫に頼み事をするわけでもなし、迷惑を掛けるわけでもありません。むしろ、「キミがすることなら応援するよ」と言ってあげるのが夫の役割ではないでしょうか。こうした発言には男性が妻を“所有物”と思っていることが根底にあります。所有物だから目の届かないところで勝手に行動するのを許せないのです。政治活動や起業を決意したら、まず行動を起こしてください。夫には相談しないで事後報告だけにしましょう。相談しても反対されるだけですから。

収入と生きがい、希望のある場所に女性は集まります。監視型のムラ社会は望んでいません。

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