JAが生き残るには、似た意見だけを重用するのでなく、多様な人々の支持を得るべきです。

世界に共通する2つの対立軸と4つの陣営

 世界の政治や経済が変動期に入っている中で、どのように捉え、私たちの活動に生かしていくべきなのでしょうか。
 現在の政治で主導権を握るには、人々の2つの対立軸の交差によって生まれる、4つのセグメント(陣営)の支持をいかに集めるかに懸かっています。1つ目の軸は、グローバルに生きるか否か。2つ目の軸は、経済的にどれほど分配を重視するか。セグメントは1グローバル・再分配重視、2グローバル・成長重視、3ローカル・成長重視、4ローカル・再分配重視――となります。
 どんな産業に就いているか、どれほど豊かかで人々の世界観は変わります。それは当たり前のことで、4つのセグメントのどれが偉いわけでもありません。確実に言えることは、1つのセグメントに支持基盤が偏った政権では、経済が破綻し、国民が分断される恐れがあります。民主主義は、多様な人々が共に生き、全体の幸せを少しずつでも増やしていこうというものなのです。
 この4つのセグメントのうち、少なくとも2つ、3つの支持を得なければ政権は取れません。地方だけを重視すれば都市が離反しますし、その逆も当然起こります。成長だけを求めても、再分配ばかりを求めても破綻します。政治とは折衷なのです。
 この構図は、JAが生き残るためにも同じことが当てはまるでしょう。自分たちと似た意見だけを重用するのでなく、左右の“隣人”を引き込み、2つ、3つのセグメントをカバーするような事業を展開することが重要になっています。

JAは保護から競争にかじを切る決断を

「格差」が政治的な意味を持った背景には、冷戦終結によるイデオロギーの対立の終焉しゅうえんがあります。どれほど富を分配できるのかという経済政策のみでしか違いを出せなくなった政党が格差をアピールするようになったのです。グローバリゼーションによって、資本を持たない先進国の中間層は所得が減少し、自分たちの雇用(地位)が維持できない、明日への希望を持てないという不安に襲われる事態になってしまいました。
 本質的なことは、私たちは、社会を豊かにするには、資本主義を捨て去ることはできないし、貿易で世界とつながらないと生きていけない。選択肢はないのです。
 政治と経済の役割を分けて考える必要があります。企業などの経済主体がお金をもうけ、政治が富を分配するのですが、そのバランスが大切で、政府は営利活動を阻害すべきではありません。経済成長の主役は民間組織であることが大切です。
 ホワイトカラーの仕事を選択できるのに、あえて農業をやりたいと飛び込む意欲ある若者が増えています。JAは、本当に農業をやりたい人が努力できる環境を整えなくてはなりません。そのためには、保護から競争にかじを切り、何を守り、何を捨てるのか決断することが求められます。
 JAの皆さんには、組織に根付いた協同組合のカルチャーとビジネスマインドを持ちつつ、利益を上げることで、日本農業の発展に貢献してもらいたいです。

みうら・るり

1980年、神奈川県出身。国際政治学者。東京大学卒業、同大学院法学政治学研究科博士課程修了。博士(法学)。東京大学政策ビジョン研究センター講師。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日)や『FLAG7』(フジテレビ・ホウドウキョク)などに出演。著書に『シビリアンの戦争』(岩波書店)、『日本に絶望している人のための政治入門』(文藝春秋)、『「トランプ時代」の新世界秩序』(潮出版社)など。愛着のある土地の農産物を定期購入するなど「食へのこだわり」が強く、家ではル・クルーゼやストウブ(鋳物の鍋)を使ってお米を炊いている。

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