私のオピニオン
田中慶一

Keiichi Tanaka
農林水産省フード・アクション・ニッポン推進本部事務局長

国産の消費拡大に向けた国民運動「フード・アクション・ニッポン」事務局長の田中慶一さん。 都会の消費者が農村の暮らしや生産者の思いの詰まった農産物や食品に注目している今は、地方創生のチャンスだと見ています。

優れた商品には開発のストーリーがあり、「他には負けない」という生産者の自負を感じます。

消費者の意識と購買行動を変えたい

 農林水産省の「フード・アクション・ニッポン」は、2008年の発足から足かけ10年間、国産の農林水産物(1次産品)の消費拡大に寄与するという趣旨に賛同する9,596のメーカー、流通、小売り、外食の企業・団体(平成29年7月31日現在)を「推進パートナー」と位置づけ、連動した活動を行っています。消費者の皆さんに“国産”に興味を持ってもらい、購買につなげることが最大のミッション(使命)です。
 私は2014年から3代目の推進本部事務局長を務めています。国産を「何気なく手に取る」のではなく、「意識して選択する」ことで購入していただけるよう、消費者の行動を変えたい。そのような思いで日々、活動しています。

消費者に選んでもらうには“工夫”が必要

 事務局では、ロゴマークを推進パートナーの商品パッケージや店舗に付けてもらうことをはじめ、国産農林水産物の消費拡大につながる優れた産品を表彰する「フード・アクション・ニッポンアワード」を2009年度からこれまで8回、開催しています。
 生産者やメーカーにとっては、受賞して終わりではなく、むしろそこからがスタートになります。産品が市場に流通されても、消費者に選んでもらうにはさまざまな“工夫”をしなければなりません。2016年度からは、百貨店、流通、外食のトップが審査委員となり、「究極の逸品」として選んでいただいた産品を自社の販路を通じて消費者に届けています。同様なコンテストがいくつかありますが、賞を授与させていただいた後も、消費者に選んでもらうためのお手伝いをするのがわれわれの役割だと思っています。この点が画期的で、意義深い取り組みだと思います。
 生産者の方々は、良品を作るだけでなく、自分たちの産品がどのように売られているかを知ることが必要で、ぜひ、消費の現場である売り場に足を運んでください。産品を売ることは、JAの販売担当だけでなく、産地全体で「自分ごと」として、当事者意識を持って取り組むべきです。“自分たちの思い”とは異なる形で販売されている場合は、変えてもらえる余地がないのか相談するなど、売り場の意見(声)に耳を傾けてみてはいかがでしょうか。生産と販売の双方で意見を交わすことは、きっと新たな商品開発や売り上げアップにつながると考えます。

他の商品に負けない自負を感じる商品を

 これまで「フード・アクション・ニッポンアワード」を受賞した素晴らしい商品の中から、JAや生産者の皆さんにご紹介したい商品が4品あります。共通する特徴は、目を引くパッケージなど表面上の工夫だけでなく、開発のプロセスやストーリーです。生産者の思いや活動が盛り込まれ、「他の商品には負けない」という自負を感じられます。消費者の皆さんが生産者や産地に思いをはせて食べることができます。
 はじめの2品は原材料(1次産品)で、2016年度のアワード「究極の逸品」10産品に選定されたものです。
 1品目は、無農薬米を生産・販売する法人・なかがわ野菊の里(徳島県阿南市那賀川町)の「伝統黒米弥生紫やよいむらさき」(写真➊)です。この黒米は1,300年前から栽培が続けられており、白米1合に大さじ1杯の割合で混ぜて炊くと赤飯のような紫色となり、独特の甘みが出ます。ポリフェノールを多く含み、健康志向の強い方に人気で、ネット販売で年間1.5tを売り上げています。台風に弱く、栽培は簡単でないのですが、守るべき食文化を伝えてきたことが評価されました。審査委員のレストラン運営会社の社長がその味を絶賛し、レシピ開発に取り組んでいます。
 株式会社おおいた姫島(大分県東国東郡姫島村)の「幻の2日ひじき」(写真➋)は、姫島村で12月の大潮の2日間だけ採取される寒ヒジキで、一般的な寒ヒジキと比べて1~2か月早い時期に採るため、新芽が実に柔らかい!販売量は乾燥させた状態で、わずか300~400kg。採取日が限られているというストーリー性と希少性がブランド化につながりました。今年の3月、大手コンビニで「ナムル」と「トルティーヤ」として商品化されました。
 ひまわり乳業株式会社(高知県南国市)は、2014年度「流通部門」で優秀賞を受賞しました。約20年前から販売されている青汁飲料「菜食健美さいしょくけんび」(写真➌)は、原料のケールや小松菜など10品目を地元の中山間地の農家と契約栽培を行っています。原料を庭先集荷することで高齢者の見守りにも寄与しています。地域貢献する経営が住民から支持されており、販売量も年間約360万本と安定しています。
 横浜市のみそまる普及委員会(株式会社トランタンネットワーク新聞社)は、2015年度「食文化・普及啓発部門」の最優秀賞に輝きました。「みそまる」(写真➍)は手作りみそと具材を一緒に直径3cmほどに丸めたもので、お湯を注ぐだけで、簡単にみそ汁を味わえます。希少な地場産大豆をなじみのある食品に加工したことは、各地にある在来種を守るヒント(手法)を示唆しています。
 以上4品ですが、いかがですか。地域でこのような商品を開発する上で、JAの役割・存在は大きくなっていくはずです。全国のJAからも素晴らしい商品が誕生することを期待しています。

地域の特産物は都会でなく、本場の産地に出かけて味わうという価値観が醸成されています。

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