私のオピニオン
笹谷秀光

Hidemitsu Sasaya
株式会社伊藤園 顧問、CSR/SDGsコンサルタント

「JAこそSDGsの実践者ではないか」と語るのは、企業や自治体にアドバイスを行っているSDGsコンサルタントの笹谷秀光さんです。国連が掲げた2030年までに政府や企業・団体が取り組むべき17の目標がSDGs(持続可能な開発目標)です。なぜ、JAがSDGsに適した組織なのか。その理由とSDGsに取り組む意義について、お話を伺いました。

加速度的に変化する世界において、不透明な時代のよりどころとなるのがSDGsです。

持続可能な社会づくりの「羅針盤」

「SDGs」という言葉を見聞きしたことがあるでしょうか。「Sustainable Development Goals」の略で「持続可能な開発目標」と訳します。横文字だらけで難しい印象を受けられたかもしれません。外国の問題と思われがちですが、読者の皆さんにとっても決して関係のないことではありません。混迷の時代を生きる上で、必要な考え方、大事な行動指針です。SDGsは私たちの問題です。つまり「自分ごと」として「当事者意識」を持っていただくため「SDGs」を分かりやすく説明します。
 SDGsは、2015年9月25~27日、国連本部で行われた「国連持続可能な開発サミット」で採択されたアジェンダ(行動計画)で、2030年までの国際社会共通の目標で、具体的に「17の目標」「169ターゲット」を設けています。途上国だけでなく、「世界の全ての人が発展するためにはどうすべきか」という普遍的な課題と捉えられますが、私はもう一歩進んで、「持続可能な社会づくりの羅針盤」と考えています。
 21世紀に入ってから、世界は加速度的に変化しています。政治ではナショナリズムが台頭し、経済は国境だけでなく、業界の境界もなくなり創造的な破壊が起こっています。社会的には、中所得層が崩壊し貧富の差が拡大し、若者と高齢者の世代間の断絶も懸念されています。テクノロジーの進歩は目覚ましいもので、ICTで情報は一瞬にして世界中に伝わり、AIやロボット、サイバー空間など、少し前には考えられなかったことが可能になっています。
 人類史上類を見ない不透明な時代において、何か頼りになるよりどころを世界中が求めていました。2013~2015年の3年間かけて、国連加盟全ての193か国が徹底的に議論して、まとめ上げたのが「持続可能な開発目標(SDGs)」です。

世界と地域社会を変革するストーリー

「羅針盤」は、5つの「P」を頭文字にしたキーワードで成り立っています。まずは「People(人間)」。2番目が「Prosperity(繁栄)」。3番目が「Planet(地球)」。4番目が「Peace(平和)」。最後に「Partnership(連携)」です。
 SDGsの前身にMDGs(ミレニアム開発目標)がありましたが、途上国の支援が中心でした。しかし、突き詰めると途上国・先進国に関係なく5つの「P」が危機にひんしていることが認識され、SDGsへと議論が集約されました。この危機に対処するために設けたのがSDGsの「17の目標」と「169ターゲット」です。
 私たちの暮らし、農業、JAと関連付けながら5つのPと17の目標を考えてみましょう。まず「People(人間)」が尊厳を持って生きていくため、「貧困をなくそう(目標1)」「飢餓をゼロに(目標2)」「すべての人に健康と福祉を(目標3)」「質の高い教育をみんなに(目標4)」「安全な水とトイレを世界中に(目標6)」は、国・地域に関係なく実現しないといけない人類共通の普遍的な価値です。さらに、「ジェンダー平等を実現しよう(目標5)」は、女性への暴行・虐待は絶対に許さないという人権尊重の意識が世界中で高まっています。「#MeToo運動」などがありました。わが国は世界経済フォーラムによる「2018年版ジェンダー・ギャップ(男女格差)指数」が149か国中110位です。
「Prosperity(繁栄)」では、まず「働きがいも経済成長も(目標8)」があります。人間らしい働き方のできる職場の実現を目指して日本でも、政府と民間で「働き方改革」に取り組んでいます。「産業と技術革新の基盤をつくろう(目標9)」では、社会を良くするイノベーションをもたらす農業を含めた産業基盤の実現が求められます。人工衛星など最先端技術を用いたスマート農業の推進が当てはまります。「エネルギーをみんなに そしてクリーンに(目標7)」「人や国の不平等をなくそう(目標10)」も大切です。しかし、海外の自国第一主義を掲げる政権では、温暖化対策に背を向け、差別的な移民政策を取るなど、気掛かりな事態が進行しています。「住み続けられるまちづくりを(目標11)」では、JAの皆さんにとっても、中山間や過疎地の生活インフラや条件不利地での営農など、地域社会や農業の維持という身近な問題が当てはまります。
「Planet(地球)」では、「つくる責任 つかう責任(目標12)」「気候変動に具体的な対策を(目標13)」「海の豊かさを守ろう(目標14)」「陸の豊かさも守ろう(目標15)」の4つの目標が反映されます。農業は異常気象の悪影響を最も受ける産業です。フードロスの問題は、農業者は当事者として解消する努力をしないといけません。また、2020年の東京五輪の食材調達に合わせてGAP(農業生産工程管理)の導入は可及的速やかに取り組むべき課題です。「Peace(平和)」は、「平和と公正をすべての人に(目標16)」で、公正が確保されない社会では経済は発展しません。「Partnership(連携)」は、「パートナーシップで目標を達成しよう(目標17)」で、協同組合が本領を発揮できる分野です。非営利組織の協同組合間のネットワークを活用すれば、日本社会に新しい価値が生まれることが期待されます。
 このようにSDGsの17の目標は、世界と身近な地域社会を変革するためのストーリーとして相互に関係しているのです。

SDGsは慈善事業でなく、貢献を世界に発信し、本業の競争力につなげ経営の発展に生かすことが重要。

「SDGsのピクトグラム」は国連広報センターのHPを参照してください。http://www.unic.or.jp/files/sdg_logo_ja_2.pdf

SDGsの「17の目標」と「169ターゲット」の和訳は国連グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンのHPを参照してください。http://www.ungcjn.org/sdgs/goals/goal01.html

ページトップへ