私のオピニオン
古田大輔

Daisuke Furuta
「BuzzFeed Japan(バズフィードジャパン)」 創刊編集長

紙からスマートフォンに情報提供の手段が移行する「メディアのデジタル化」が進行する中、「バズフィードジャパン」の創刊編集長を務める古田大輔さんは、多様な情報で人々の生活に“ポジティブなインパクト”をもたらし、その先にある“社会の変化”を加速させたいと語ります。ネットメディアの可能性と懸念について話を伺いました。

情報技術が劇的に進化する中、大事なことは読者が求める“手段”で情報を提供することです。

デジタル化の潮流から遅れた日本

“紙” の新聞を読んでいる読者の皆さんも日々、実感されているかと思いますが、ニュースを知る手段は、若い世代を中心にスマートフォンに移行しています。アメリカでは「BuzzFeed(バズフィード)」「HUFFPOST(ハフポスト)」などの新興のネットメディアが次々と誕生し、ワシントンポストやニューヨークタイムズなどの老舗の新聞社でも、劇的に進化する情報技術への対応に追われるなど、紙からデジタル端末に情報提供の手段がシフトする「メディアのデジタル化」が進行しています。日本では、新聞やテレビなど既存メディアの存在感が大きいという特殊な事情もあり、デジタル化が遅れました。
 私はもともと新聞記者で、マレーシアでの選挙取材でボルネオ島を訪れた際、候補者は新聞やテレビではなく、ネット上で動画や音声を公開する「ポッドキャスト」を活用して政見を有権者に伝えていました。日本ではネットの選挙活動が制限されるなど、社会全体でデジタル化の潮流から取り残されました。
 情報を得る手段が紙の媒体からスマートフォンに変わったのに、発信する側が情報の流通の変化に対応しきれなかったのが、これまでの日本のメディアの姿です。大事なことは読者が求める手段で情報を提供することです。「若者の新聞離れ」と言われていますが、若者が離れていったのではなく、新聞が若者から離れてしまったのです。若者は社会の出来事に関心があります。新聞社が努力して、若者に読んでもらえる手段で記事を届けなければ、離れていくのは当然の帰結です。部数が減少していることもあり、日本の新聞のデジタル化(電子版)への移行は、スタートが遅れた分を取り戻すかのように急速に進みつつあります。

ポジティブなインパクトを

 大学2年の春休み、マザー・テレサに由来するインドの施設でボランティアをしました。スラム街の路上に倒れている人の最期をみとる活動です。格差の現実と、それに向き合う人々の姿を見て、報道で伝えたいと思い、記者を志すようになりました。学生の頃からインターネットは好きでしたが、就職活動をしていた当時のネットメディアの規模は小さかったこともあり、2002年、朝日新聞社に就職しました。入社後、国内外のさまざまな現場を取材したことは大きな糧となっていますが、その過程で、同年代から下の世代は、新聞をほとんど読まなくなったこともあり、メディアのデジタル化の流れは不可避だと感じるようになりました。シンガポール支局から帰国した際、デジタル編集部を希望しました。AI(人工知能)、データ解析、アプリ設計などデジタル技術の革新によって次々と誕生する新しい報道手法など、ネットメディアの魅力と可能性を学ぶうちに出会ったのが「人々の生活にポジティブなインパクトをもたらす」の理念のもと2006年、アメリカで設立された「BuzzFeed(バズフィード)」でした。世界12か国で発信するグローバルメディアですが、取材で「日本版」を立ち上げる構想を知り、興味を持っていたところ誘いを受けて、13年間勤務した新聞社を退社し、2015年10月、「バズフィードジャパン」の創刊編集長に就任しました。
 新聞記者の頃は、電話や手紙で感想をいただくこともありましたが、読者の反響が見えにくいと感じていました。ネットメディアでは、読者と直接、つながることができるので、さまざまなコメントが寄せられます。閲覧数やSNSの「リツイート」や「シェア」をリアルタイムで把握でき、反響を受けて記事の質を高めることができます。あと、若い読者とつながることができるのも魅力だと感じました。

読者に“行動”を促すことで社会に新たな価値観をつくり出し、共に課題の解決に取り組みます。

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