対談②

土屋 敏夫 日本生協連会長

中家 徹 JA全中会長

コロナ時代における
協同組合の役割について

新たに日本生協連の会長に就任した土屋敏夫さん(日本生活協同組合連合会会長)と中家徹会長(全国農業協同組合中央会会長)が、JCAの比嘉専務による進行のもと、コロナ時代における協同組合の役割について語られました。9月号に引き続き紹介いたします。

比嘉専務: 協同組合の活動とSDGs の取り組みについて特徴的な取り組み、役割などをご紹介いただければと思います。目標とする2030年までの残り10年間を国連は「行動の10年」と位置付けています。協同組合間連携によるSDGsへの取り組みや、今後、力を入れていく点など各地で取り組まれている事例を踏まえて、ご紹介ください。

土屋会長: 全国の生協では、さまざまな環境保全や持続可能な社会づくりへの取り組みを進めてきました。2018年には、「コープSDGs行動宣言」を日本生協連総会で採択しました。これは、これまで行ってきた環境保全や持続可能な社会づくりのさまざまな取り組みを引き継ぎ、17の持続可能な開発目標に沿ったかたちで、7つの取り組みを重点にその実現に貢献することを宣言しています。さらに、それを具体化したものとして、「生協の2030環境・サステナビリティ政策」という10の行動指針をまとめました。環境や人と社会に配慮した商品を利用するというエシカル消費の取り組みや、しっかりと裏付けがあるかたちで、温室効果ガス40%削減を目指します。また、使い捨てプラスチックの25%削減や、食品廃棄物の削減などを掲げています。環境や社会に配慮した主原料を使った商品を「コープサステナブル」としてシリーズ化し、商品にマークを付けて組合員に分かりやすくしています。
 SDGsには、貧困問題・飢餓をなくすという目標もあり、生協は食品事業者としても、消費者の組織としても、この問題は目標12「つくる責任 つかう責任」としての議論をしっかりとしていくべきであると思います。異常気象や砂漠化など、世界的に環境問題が大きくなる中、世界の穀倉地帯からの輸出が滞る事態も想定されます。食料供給への不安や国際的な関係悪化が生じれば、当然、供給国も自国優先になります。私が商品事業を管掌していた2007年当時に、穀物が世界的に急騰したことがあり、アジア・アフリカでは暴動が起きる事態がありました。食料へのアクセスが国際関係の緊張の中で阻害される可能性というのは常にあります。今回のコロナ禍でも、コンテナ不足や港湾業務の遅延による物流問題なども発生しています。流通の目詰まりなどの複合的な要因で、長期的にも食料危機の不安は拭えませんし、瞬間的にはかなり厳しいことも想定できます。その意味では日本の自給力向上は国民の願いであると思います。その願いを裏付ける農業の、担い手や農地の保全・確保というのは重要な課題として、消費者も理解し、一緒に勉強していくことが、まさに今SDGsで大事なことです。

中家会長: SDGsへの取り組みは、生協グループがかなり早く進められています。JAグループでは、2020年5月に「JAグループSDGs取組方針」を策定しました。われわれが取り組んでいることは、「17の目標」になんらかのかたちで関連しており、これまでの活動を強化していくことがSDGsの目標達成につながると考えています。この秋に第29回JA全国大会を開催しますが、現在組織協議を行っているJA大会議案においても、SDGsへの取り組みを盛り込んでいます。
 JAグループは、SDGsの、特に「食」という部分への大きな役目があります。食料を安定的に供給する役割は本当に大きいと思っていますが、その一方で、近年は食料安全保障のリスクが非常に高まっています。私が心配しているのは、農業生産基盤が弱体化していることです。生産基盤とは、「人」と「農地」です。農業は担い手が減少し、高齢化しています。昭和から平成に変わるとき、日本の就農者の平均年齢が57歳だったのですが、平成から令和に変わるときには67歳となってしまいました。平成の30年間で10歳も平均年齢が上がったのです。万が一、同じペースで高齢化が進んだら、令和30年には平均年齢が77歳になります。10年先を見通すと、本当に危機感を持っています。また、農産物は工業製品と違い、足りなくなったからといってすぐに増産できるわけではありません。農地が一度荒れてしまうと、戻すのに5年、10年の時間が必要になります。こうしたリスクについては、現在の農業・地域社会におけるコロナ禍の状況も含めて、消費者・国民の皆さんに知っていただかなければいけないと思います。
 「環境」については、農林水産省が「みどりの食料システム戦略」として、SDGsやカーボンニュートラル等への対応に向けた取り組みを策定しています。いずれの取り組みも重要ですが、なかなか現場との乖離かいりが大きいので、それをどう埋めていくのかは大きな課題です。
 SDGs17の目標は日本だけではなく、世界共通で17の目標達成に向け、行わなければならない課題を整理したものです。その中には当然、行うことの濃淡、優先順位をつけなければなりません。基本的にJAグループには『JA綱領』というバイブルがあって、それに忠実に取り組むことがすなわちSDGsへの取り組みになるのではないかと捉えていますが、われわれも生協の皆さんとともに意識を高めて、積極的に情報発信していかなければならないと思って頑張っております。

比嘉専務: 最後になりますが、新型コロナウイルスへの対応やSDGsにおいて、JA・生協とも地域を基盤とし、地域を支えていることがよく分かります。JCAが発足した背景にも、それぞれの協同組合が長年にわたり地域を支えてきたことがあります。さらに、協同組合間の連携を広げ、深めることで、地域において大きな役割が果たせるという問題意識がありました。そういう観点から、双方への思いや期待、それへの受け止めについてお話しいただければと思います。

土屋会長: 生協は各県にあって、JAと協力して地域で取り組みを進めています。産直などの分野では各地の生協がJAと長い時間をかけて培ってきた信頼関係があり、生協の組合員もJAの皆さんと交流しています。「日本の生協の2030年ビジョン」に「つながる力で未来をつくる」というフレーズがありますが、誰もが安心して暮らせる地域社会というのは、まさにJAと生協などの協同組合の協力が不可欠で、力を合わせて進めていく必要があると思います。暮らしの基本は食ですし、安心して暮らすためには食料の供給・調達に不安がないことが重要になります。地域の暮らしは、地元のJAと生協が課題の解決に取り組み、前進できればと思います。災害や今回のコロナのような困難に直面したときにいろいろな事例があると思うんです。この間、大学生がコロナでアルバイトができなくて生活に困っているというときに、JAがお米を、われわれがおかずを提供したということがありましたね。先ほどの給食の牛乳が売れないというときに、別の販路として消費者につないでいくということなどもありました。事情が伝わり、流通がしっかり機能すれば消費者も受け入れていただけるという感じでした。それと飲食や旅館・ホテルに回るはずだった高級な食材を売るのが大変なときに、いろいろと売り方を工夫して協力できるかと思います。こういった地域におけるJAとの連携をこれからも進めていけたら、と思います。
 このコロナ禍の中で「国消国産」のように国産の食品を買いたいという消費者のニーズや、軸は違いますがオーガニックを求めるという消費者の意識や関心が高まってきています。農水省の「みどりの食料システム戦略」を見ても、オーガニックをどれくらい受け入れてくれるのかも含めて消費者との対話も必要ですし、農薬の問題も興味があるだろうし、生産と消費という構造を大きく変えるならば、大きく変えるなりの議論を、生協も一緒に、真面目に行っていくということが必要だと思います。各地のJAとの連携はそれぞれ進んでいるわけですが、農業や地域づくりの分野でも日本協同組合連携機構をプラットフォームとして、協同組合間の連携といった軸を改めて発展させていきたいですね。

中家会長: 私も組合長時代に何回か生協さんとお取引させてもらいましたが、一つ驚いたのは、生協さんの安全安心な食料を組合員に提供する、という強い使命感ですね。その分、産地にはものすごく厳しい側面もあります(笑)。ただ、約束したことは徹底的に守っていただける。これがものすごくありがたいことなんです。例えば、梅の共同購入では、パンフレットを3月から4月に作られて、今年のM玉の梅は、キロ何円で売りますよと書かれます。ところが梅の豊凶や玉の大きさは、下手したら供給目前の5月から6月にならないと分からないこともあり、注文いただいた大きさ・量とマッチしないことがあります。そういったときに、組合員さんに説明して、2kg入りを1kgに変更してもらったり、2箱注文されたのを1箱に変更してもらったり、生産側のことを理解いただいた上で、しっかり対応いただけます。組合員・消費者のために徹底的に「産地には要求しますよ、しかし約束は守りますよ」という姿勢がブレない。これがとてもありがたいわけです。
 生協グループには3,000万人近い組合員がいらっしゃいます。この方々がみんな「国消国産」という認識になれば、すごい力になると思います。まさに世論を形成していく、そこに大いに期待しています。
 そして、生協とJAの共通するおもいは、持続可能な地域社会の実現だと思います。地域活性化のためにどのように連携していくかということを検討していく必要があるのではないかと思っています。
 先ほど話題に出た「みどりの食料システム戦略」ですが、いくつか具体的な数値目標が出されています。例えば、有機農業については、2050年までにオーガニック市場を拡大しつつ、現在の日本の農地面積の4分の1に当たる100万haにまで拡大する、としています。ところが、現実には、最終的に採算が取れないことも多く、有機農業をやる方はなかなか増えていません。みどりの食料システム戦略の推進・実現に向けては、もちろん農家の意識も変わる必要がありますが、最終的に消費者の皆さんがモノの価値に加えて、環境負荷低減というプラスアルファの価値を持つことが真の価値であるという認識になっていくことが必要です。環境に配慮した農業を進めていくには、消費者の方々にも理解を求めていくことが必要なのではないでしょうか。
 土屋会長もおっしゃるように、同じ協同組合として、共通してやらなければならないことはたくさんあるのですから、それをお互いが見いだして、それぞれの地域に合ったやり方・連携というものを具体的に実践できたらな、と思います。

つちや・としお

1957年東京都生まれ。1982年に都民生協(現在のコープみらいに就職)。2007年生活協同組合連合会コープネット事業連合専務理事。2019年日本生活協同組合連合会副会長。2021年から現職。


なかや・とおる

1949年和歌山県生まれ。2004年JA紀南組合長。2012年JA和歌山中央会・各連共通会長。2012年JA全中理事。2013年JA紀南会長。2017年8月から現職。

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