無煙炭化器、普及進む - 山梨・JA南アルプス市

環境問題に関心のある若手や女性らが牽引

 JA南アルプス市管内で、無煙炭化器を導入する農家が増えている。JAは、県が取り組む農業分野から脱炭素社会の実現を目指す「4パーミル・イニシアチブ」に賛同し、2021年から各地で講習会を開催。これまで農家34戸が無煙炭化器を購入するなど普及が進み、県外から視察も訪れる。

 炭化器は底のないすり鉢状のステンレス製で、直径1メートルほど。剪定(せんてい)枝を入れて火を付けると30~40分ほどで燃焼し、炭化する。一度に入れる枝の量が限られることや、枝の太さをある程度そろえないと火加減が難しいことなどから、焼却に慣れていた農家から敬遠されていた。

 一方で、環境問題に関心のある若手や女性らが積極的にJAの講習会に参加。若手農家らが園地で炭化器を使っていると「焼却より煙が少ない」「炭を畑に埋めると土壌改良につながる」などの利点が他の農家にも伝わり、徐々に炭化器を導入する農家が増えていった。

 先に使う農家が周りに教える形で火加減も上達。JA営農経済部の手塚英男次長は「普及の鍵は若手と女性の農業者だった」と振り返る。

 炭化器で囲われているため周りの草などに燃え移りにくいと、火災事故を心配する家族から導入を促された例もあったという。

 JAは炭化器を販売する他、購入を検討する人にデモ器を貸し出す。

 12月中旬には、青森県のJAや行政関係者5人が視察に訪れた。手塚次長が炭化器や炭になった剪定枝を前に使い方や普及状況について説明した。手塚次長は「農家も『環境に良い』だけではなかなか動かない。女性農業者の集まりで講習会を開くなどして環境問題に関心のある人たちから広まっていった。地域全体の意識が高まることに期待したい」と話した。


<2024年1月10日(水) 日本農業新聞 ワイド1首都圏>