イチジク株枯病抑制へ 新防除法で活路 - JAわかやま

所得向上へ総合防除体系確立めざす

JAわかやまは、イチジクの収量が減少する原因の一つとなっている難防除病害「株枯病」の発生と進行を抑制する活路を見いだした。水素イオン指数(pH)値の上昇が期待できる三つの土壌改良材を試験したところ、一部で抑制効果を確認したという。

 株枯病は糸状菌による土壌伝染病害で、感染すると樹皮下が褐色に腐敗して枯死に至る。1981年に国内で初めて発見され、現在では、全国ほとんどの産地で発生している。一度発生すると圃場(ほじょう)全体にまん延し、防除は難しい。これまで抵抗性台木(接ぎ木苗)や薬剤防除など、さまざまな対策を講じてきたが、防除体系の確立には至っていない。

 そこでJAは、発症例や土壌成分の分析結果からpH値に着目した。4年前に全園地で土壌分析を実施したところ、値が低い(酸性)土壌ほど株枯病が多発していることを確認。適切な土壌矯正資材を施用することで、株枯病の発生を抑えられるのではないかと考え、防除技術の開発に乗り出した。

 防除試験は、生産者の協力を得て13の圃場で3年間にわたって実施。pH値の上昇が期待できる三つの土壌改良材を新梢(しんしょう)生育期の4月下旬と5月下旬に10アール当たり200キロを畝に全面散布し、矯正による防除効果を比較検証した。

 その結果、鉄、ケイ酸、微量要素(ミネラル)を含んだ主に水稲栽培で使用する資材で株枯病の発生と進行を抑える効果を確認。JAは次年産から栽培指針に導入し、土づくりを重視した耕種的防除の実践に取り組んでいくとしている。

 JA東部営農センター(同市森小手穂)の岩橋直路営農指導員は「抑える効果を見いだせたことは大きな成果。農業所得向上のためにも、総合防除体系のいち早い確立を目指す」と話す。

 JAは、果樹複合経営の柱としてイチジク栽培に力を入れている。管内東部の山東地区が主な産地。今年産は31戸(前年比1戸増)のイチジク部会員が無加温ハウス、露地の計10ヘクタール(同106%)で栽培した。県内2位の生産量で、7月下旬から11月中旬まで関西、関東の市場を中心に128トンを出荷した。(わかやま)
(日本農業新聞2021年1月5日付ワイド1近畿より)