【講演】きさらぎ会

 中家徹JA全中会長は、10月10日に東京都内で開催された共同通信社主催「きさらぎ会(東京10月例会)」にて「持続可能な食と地域づくりに向けて」をテーマに講演しました。

<テーマ>
持続可能な食と地域づくりに向けて

<概要>

  • 今日は持続可能な食と地域づくり、すなわち食料安全保障を考えることがテーマです。では、なぜ今、食料安全保障を問うのか。わが国は戦後の食料難から、高度経済成長を経て、今は好きなものが好きなときに買える時代になりました。
  • しかし昨今、こうした環境は大きく変わり、食料安全保障が脅かされています。その理由は大きく5つあります。1つめは低い食料自給率、2つめは農業生産基盤の弱体化、3つめは日本を含む世界規模での災害発生、4つめは人口増加による需給ひっ迫、5つめはグローバル化の進展です。
  • まず、わが国の食料自給率は、2018年は過去最低の37%です。これは他の先進国のなかでも、きわめて低い数値です。1965年は73%でしたから、半世紀で半減しているのです。
  • 農業の生産基盤である「人」と「農地」も弱体化しています。わが国の農業者の平均年齢は約67歳と、平成初期から10歳高齢化しました。農業就業人口もここ数年、年8.5万人のペースで減少しています。国内の農地面積も減少していて、1960年には約607万ヘクタールだったものが、現在は440万ヘクタールとなっており、減少に歯止めがかかっていません。
  • そうしたなかで、世界では災害が多発しています。昨年はわが国の農畜産物輸入先上位5カ国のうち、4カ国(米国、中国、豪州、タイ)で、大雨や干ばつなどの災害が発生しています。わが国でも大雨や地震の発生回数は増えています。
  • また、世界人口も増加しています。現在でも食料需給はひっ迫していますが、2050年には人口は95億人に達すると予測されています。これまで日本に食料を輸出していた国が、これからも日本に輸出し続けてくれるという保証は、どこにも無いのです。
  • そして、グローバル化が進展しています。わが国は貿易立国ですから、私たちは貿易協定そのものには反対していません。ただし、それがわが国の農業の持続可能性を損なうものであってはなりません。米国や豪州などと日本の農業形態は全く違いますから、同じレベルでの競争には限界があります。影響を受ける部分はしっかり国内対策をしていただくことが重要です。
  • こうした環境のもと、JAグループは食料安全保障の確立に向けた取り組みを行っていきます。しかし、私たちだけでは達成することはできません。食と地域をどうするかということは、農業者だけでなく、国民全体の問題なのです。
  • ぜひ国民の皆様に、こうした食を取りまく実態を理解していただきたい。そして、農業は大事だ、農村を守りたいと思ってくださる方を少しでも増やしたい。それこそが、農業・農村を元気にし、わが国の食と地域が持続可能なものとするための、大きな原動力となるのです。

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