「都市農業の多面的機能と持続的発展」を学生と研究 - JAわかやま
和歌山大学と今年度の研究成果報告会開催
和歌山市のJAわかやまと和歌山大学は「都市農業の多面的機能と持続的発展」をテーマとした共同研究に取り組んでいる。同大学で2月上旬、2022年度研究成果報告会を開き、大学教授と学生、JA職員、行政関係者ら22人が参加。情報を共有した。
同JAと大学は、15年度から都市農業再生に向けた研究を進め、四つの農業体験農園の開園、「JAわかやま寄付講義『食と農のこれからを考える』」の開講など成果を上げている。21年には同市を加えた「都市農業振興のための産官学包括連携協定」を締結し、より広域的な活動に取り組んでいる。
報告会では、桃山学院大学ビジネスデザイン学部長の菊地昌弥教授とゼミナールの学生が中心となり、「営農指導事業」の協同農業普及事業との関連性や補完の可能性、都市型JAでの体制強化の必要性を学術的視点で考察したことを紹介。和歌山大学食農総合研究教育センター長の岸上光克教授が研究に協力。菊地ゼミ生が研究内容を発表した。
研究は、同JA管内と比較的近い環境にある大阪府の3JAを事例対象とした。
3JAとも営農指導・農業関連事業収支がマイナスで、営農指導員の量的・機能的な不足を一因に協同農業普及事業を補完、代替することは厳しい状況にあると分析。収支改善を図り、営農指導員の増員と職場内研修(OJT)を介した資質向上、他事業と連携したマーケットインに基づく活動を実践することで代替の可能性があることを報告した。
都市農業では兼業農家が多く、JAへの依存度が高い。技術指導だけでなく相談機能の強化も必要、組織内の単純な人事ローテーションは有効ではないと指摘。経営管理や資金対応など、1組合員当たりの相談時間を増やすことのできる体制強化が、都市農業の持続的発展をもたらすと考察した。
JAわかやま営農生活部の田邉純三副部長は「営農センターの設置で体制強化に成果を上げている一方で、他事業との連携強化が課題」と話し、意見交換を行った。岸上教授は「現状、量的課題の解決には限界がある。今回はデータを基に研究したが、次年度以降は現場の声も取り入れ、未来を開く道筋を示していきたい」と話す。
< 2023年2月 18 (土)付け 日本農業新聞 ワイド2近畿>