鳥獣害対策 - JA紀南
「地域農業振興・再生計画」の重点課題
深刻化するイノシシ、シカ、サル、ヒヨドリなどによる鳥獣害は営農存続のうえで大問題となっている。JAの「地域農業振興・再生計画」でも鳥獣害対策を重点課題と位置づけ、行政機関等と連携した捕獲活動や狩猟(わな)免許の取得、JA独自助成などによる防護柵の導入などに取り組んでいる。平成30年度開始の「農業所得向上対策支援事業」のメニューのうち、各地区の生販組織が取り組む「地域活性化支援」では4地区が箱わな設置などによる鳥獣害対策の強化を取り上げた。
農家の防護柵設置や捕獲へJA支援事業での対応進む
JA紀南は営農地区懇談会を通じて組合員農家から鳥獣害アンケートを行っている。平成29年度の集計結果では、田辺から串本までのJA管内で計1059件の鳥獣害が報告された。獣種別の内訳は、イノシシ36%、ヒヨなどの鳥16%、シカ12%、アライグマ12%、ウサギ10%、タヌキ8%、サル5%などだ。
被害の内訳は、農作物の食害が49%、農地荒らしが33%、枝折れなど作物本体の損壊が15%。被害規模にすると、圃場面積で166㌶、果樹などの被害本数で2万383本、農作物の被害量は94㌧に達する。
農家からは「何をやってもいたちごっこ」「もうお手上げ」との声が聞こえる。一方では、防護柵の設置や農家自身によるくくりわなでの捕獲などの必要性を感じ、行政やJAの支援措置を求める意見が多い。
JA紀南は平成30年度、JAグループ県域企画応援事業を活用し、JA単独の防護柵支援を行い、71件、事業費規模で約1000万円の申込みがあり、約487万円を助成した。31年度は農業所得向上対策支援事業(以下=所得向上対策事業)を活用して支援を継続する。
所得向上対策事業では、くくりわな使用に必要な狩猟登録申請費用の2分の1の助成も行い、30年度は73人が活用した。助成は31年度も継続する。
県や田辺市など管内市町と連携した取り組みでは、中芳養、上富田、日置玉伝など7カ所に移動式囲いわなを設置し、30年度は9カ月間でサル22匹、シカ4頭の実績をあげている。
また、所得向上対策事業には、地域の実情に応じた支援策として打ち出した「地域活性化メニュー」(30・31年度の2カ年)があり、17地区の生産販売委員会うち、30年度は4地区が鳥獣対策の取り組みを申請し、現地で実施が進んでいる。
このうち秋津川生産販売委員会は、農家に地域の課題を聞き取って検討し、今年1月にシカ捕獲用の箱わな(鉄製のオリ)3基を設置した。費用の約20万円は全額事業が助成した。
秋津川地区では、シカによる梅の苗木や幼木の新芽・樹皮の食害、枝折れ被害が深刻で、新植した園地が全滅となる場合もあったといい、共同での箱わな設置となった。見回りは狩猟免許を持つ農家に依頼した。
坂本増巳生販委員長は「中山間事業で置かれた箱わなを補完する形で設置した。JAの事業は有り難く、1頭でも多く獲って絶対量を減らしたい」と語り、今期の実績によってはオリの増設も考えているという。
JA紀南の農業所得向上対策支援事業を活用して秋津川生産販売委員会が設置したシカ捕獲用の箱なわ(和歌山県田辺市秋津川)
13人が鳥獣害アドバイザー
専門家が各地の研修会などで、有効な鳥獣害対策として、エサ場を無くす、防護柵で囲う、捕獲するなどの総合対策が必要だと訴えることが多い。
JA紀南でも営農指導員を中心に13人が県の鳥獣害アドバイザーの認定を受けており、「待ったなし」の鳥獣被害に対し、関係機関やJAの各部門とも連携し、農家への情報提供・収集や相談対応支援に積極的に取り組みたいと考えている。
この事例に関する資料・
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