飼料高騰 搾りかすを活用 -JA東京中央

養鶏・ビール業者の悩みをJAが仲介し解決

 東京都世田谷区にあるJA東京中央千歳支店は、飼料価格の高騰に苦しむ養鶏業者と、ビールを造る上で排出される麦芽の搾りかすの処理に困っているビール業者を引き合わせた。同JAの事業運営方針である課題解決型の相談業務の一環。持続可能な開発目標(SDGs)の取り組みの一つにも位置付ける。

 同区にある吉実園は、造園業・養鶏・野菜栽培を営む複合農家だ。特に、養鶏では国産鶏の足「もみじ」の他、青い卵を産むアローカナ、ボリスブラウンなど珍しい鶏を放し飼いする。飼料価格の高騰を受け、一時期と比べ3倍近いコスト高に悩まされていた。

 一方、クラフトビールを醸造するふたこビールでは、麦芽の搾りかすが毎週100キロ以上も発生する。農家へ堆肥用に提供したり、価値を高めるアップサイクル食品としてパン作りにも挑戦したりしているが、全量は再利用し切れなかった。

 同支店の荒川博孝副支店長がそれぞれの悩みを聞き、互いの助けになるのではと考えて両者へ打診。吉実園の藤田直美さん(50)は「鶏は搾りかすをよく食べる。地域で資源を循環できるなら喜んで引き受けたい」と即決した。ふたこビール代表の市原尚子さん(52)も快諾し、翌日には吉見園で搾りかすの提供に関する打ち合わせを行った。

 荒川副支店長は「小さな活動かもしれないが、一人一人の願いをかなえるのがJAだと実感した。食と農の分野でのアップサイクルなど、SDGsの観点からも農と住の調和した街を100年先まで残せるよう挑戦したい」と意気込んだ。

 今後、搾りかすを与えた鶏の卵を使ったメニューの開発や、吉実園内の果実を使ったシーズナルビールの開発など生産者・加工業者が手を取り合い、食と農を通じたアップサイクルを実践していく。


<2022年 10月 05 (水)付け  日本農業新聞  ワイド1首都圏>