第3回 今こそ、協同組合

中家徹のピンチをチャンスに!

中家徹会長によるコラム。「週刊新潮」にて2020年3月まで連載。

 昨年11月、マレーシアのクアラルンプールで開かれた国際協同組合同盟(ICA、International Co-operative Alliance)の世界会議・総会に出席した。簡単にご説明すると、ICAとは1895年に設立された協同組合の国際組織で、世界100か国以上から約300におよぶ協同組合の全国組織が参加している。加盟組織の総組合員数は10億人を超えるとも言われ、世界最大の非営利組織とされている。日本からは私が会長を務めるJA全中をはじめとするJAグループ全国連のほか、漁協、生協、労協(労働者協同組合)など17の全国組織が加盟している。

 今回の会議に出席して、世界に存在する協同組合の幅の広さにあらためて驚かされた。中には自動車整備工場の協同組合というのもあって、整備に必要な工具や部品をまとめて大量に共同購入することで、安く仕入れているという。このような協同組合もあるのかと感心するほど、非常に多くの「仲間」がいることを心強く思った。

 もう一つ、私が感じたのは、その国の経済力によって協同組合の課題が大きく異なることだ。アフリカなど食料不足が深刻な国々では、食べ物を確保することに必死で、そのために農地を整備したり、栽培指導をしたりする協同組合が活動している。我々JAグループも食料を生産する点では同じ協同組合だが、直面する課題の違いを実感した。

世界の期待を追い風に

 日本ではあまり知られていないが、協同組合は100年も前から国際的に注目されている。国際労働機関(ILO)は発足翌年の1920年に協同組合局を設けて協同組合活動を後押ししているし、国連は2012年を「国際協同組合年(IYC)」と宣言し、2016年には「協同組合の思想と実践」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)無形文化遺産に登録された。このように国際的には協同組合の存在意義や可能性に期待が寄せられている。

 背景には新自由主義、市場原理的な政策・経済活動が世界規模で広がる一方で、飢餓や貧困、環境問題への対応など、国際社会が抱える課題がある。協同組合の存在は、こうした課題の解決に向けた可能性があるとして世界中から高く評価され、期待が集まっているのだと思う。

 購買、共済、信用事業など総合事業を行う日本のJAは、世界的にも珍しい協同組合だと世界会議でも非常に評価が高かった。こうした世界的な期待を追い風に活動を続けていきたい。

(「週刊新潮」平成30年2月1日号)

今回の総会では、JA全中の中家会長も、パネリストとして登壇。ICA理事に選出された。

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