第29回 グループ一丸、次の3年へ

中家徹のピンチをチャンスに!

中家徹会長によるコラム。「週刊新潮」にて2020年3月まで連載。

 我々JAグループは3年に一度、JA全国大会を開催している。全国からJAの代表者が出席するJAグループのきわめて重要な催しだ。開催年となる今年は、第28回目として3月7日に東京都内で開いた。「創造的自己改革の実践-組合員とともに農業・地域の未来を拓く-」をスローガンに、今後3年間のJAグループ全体の取り組み方針を決めた。

 JAグループはこれまで、「農業者の所得増大」「農業生産の拡大」「地域の活性化」を柱とする自己改革に挑んできた。その成果は着実に現れている。

 その一つが、農業生産でコストの一角を占める肥料や農薬価格の引き下げだ。これらは1JAあたり、それぞれ6.9%、4.3%のコスト削減を実現した。例えば滋賀県のJA東びわこでは、担い手農家やJA全農しがと連携して新しい栽培方法にチャレンジし、肥料費を3割も低減した。

 また、地元企業や団体と力を合わせて、地域の活性化にも取り組んでいるJAも多い。半数以上のJAが、地元商工会・商工会議所と連携して、農業の新たな価値の創出にむけ日々努力している。例えば茨城県のJAなめがたしおさいでは食品企業と連携し、甘藷(サツマイモ)のテーマパーク「なめがたファーマーズヴィレッジ」を立ち上げた。耕作放棄地を開墾した体験農園やレストラン、直売所などが人気を呼び、新たな観光スポットとして年間約28万人が来園している。

 今大会では、こうした自己改革に引き続き取り組み、挑戦していくことを決議した。

地域になくてはならない存在に

 近年、農業や地域社会を取り巻く環境は大きく変化している。本格的な世代交代を迎えたことによる生産構造の変化や少子高齢化、急速に進むグローバル化など、課題は山積みだ。一方で、新たな情報通信技術の発達や田園回帰の潮流など、未来を拓く糸口もある。

 急速に変化する社会で、JAに求められることは無限にあると思うし、それは農業だけにとどまらないだろう。地域の暮らしを支える店舗の運営、食農教育、子育て支援など、食と地域に根差した組織だからできることがあるはずだ。そして、こうしたことは企業や団体の方々との連携や消費者の方々の理解が不可欠だ。皆様と手を携えて、よりよい農業とよりよい社会を創っていきたい。

 大会は開催することでなく、決めた内容を実践していくことに意味がある。新たな3年間に向けて、全国のJAが不断の取り組みを進めていく。農業や暮らしになくてはならない存在としての役割を発揮することこそが、私達の務めだ。

(「週刊新潮」平成31年3月28日号)

おおいに盛り上がった第28回JA全国大会。創造的自己改革は、挑戦から実践へとギアを上げてゆく。

一覧に戻る
ページトップへ