第34回 食育について考える6月に

中家徹のピンチをチャンスに!

中家徹会長によるコラム。「週刊新潮」にて2020年3月まで連載。

 6月は食育月間であることをご存じだろうか。これは、食育に関する取り組みの推進を定めた食育基本法が2005年6月に制定されたことにちなんでいる。

 農林水産省では食育について「生きる上での基本であって、知育・徳育・体育の基礎となるものであり、様々な経験を通じて『食』に関する知識と『食』を選択する力を習得し、健全な食生活を実現することができる人間を育てること」としている。

JAグループの「食農教育」

 私の地元・和歌山県では、「食農教育」に積極的に取り組んできた。子どもの頃の農業体験は、農業や食に対する関心を育み、大人になっても忘れないと思うからだ。JA紀南では親子での芋掘りやミカンの収穫体験や、小学校の先生向けの農業実習を行っていた。小学校は若い先生たちが多く、先生自身も農業を知らずに教壇に立っているケースが多いと聞いていた。それならJAがお役に立てるのではないかと、教育委員会と連携して毎年夏休みに職員が小学校に出向いては、学校農園を借りて鍬の持ち方など初歩的なことから学んでいただいた。

 さらに、JAグループ和歌山では副読本「わかやまの農林水産業」を1987年から刊行。毎年改訂を重ね、現在も社会科で農業を学ぶ県内の小学5年生全員に無償で配布している。地元の農林水産業への理解を深めてもらいたいとの願いを込めた1冊だ。こうした県内農業を紹介する教材を作っている県は、和歌山以外にも数多くある。

 また、田んぼがない都会でも稲を育てる体験ができる「バケツ稲づくり」は、JAグループが1989年から始めた。種もみと肥料、栽培マニュアルのセットを全国の学校や教育団体などに無料で配布しており、バケツと土さえあれば、マンションのベランダでも稲を栽培できる。配布数は累計で1000万セットを突破したので、ご自身やご家族が体験なさった方もいらっしゃるだろう。普段当たり前のように食べていても、自分で種もみから育てることで、お米や稲作文化に対する愛着が湧いてくるように思う。

 「食」という字は「人」を「良」くすると書く。食べることは、すなわち生きること。食は生きる要なのだ。食に関する正しい知識や食習慣を子どものうちから身に付けることは、健全な心と体を育てる。皆さんも食育について改めて考えてみてはいかがだろうか。

(「週刊新潮」令和元年6月13日号)

副読本は、小学性向けに加え、教員向けの指導資料も同時に制作。地元の農林水産事業への理解を深める教材に資している。

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