2019年4月4日 JA全中定例記者会見(中家会長挨拶)
はじめに、先日新しい元号が発表されました。新しい元号は「令和」ですが、出典は万葉集の梅花の歌の序文とのことです。梅は花はもとより、農産物としても利用されているものですから、梅にちなんだ元号が選ばれたことは大変嬉しく思っています。私の地元は和歌山で、南高梅の日本一の産地であることもあり、特別な思いがあります。
梅は春の訪れを告げる花です。梅の花は小さいですが、やがて大きな実をつけます。私たちJAグループは自己改革に取り組んでおり、先月のJA大会でも成果はご報告させていただきましたが、より大きな実を結べるよう、引き続き不断の改革に取り組んでまいります。
本日の会見は、平成31年度最初の会見であるとともに、平成最後の定例会見でもあります。この30年間を振り返ると、日本農業にとっては、まさに激動の30年間だったと思っています。その中身は大小さまざまですが、特に大きなテーマは「貿易自由化」が挙げられます。
平成が始まる直前に、米国からの牛肉・オレンジ輸入自由化がありました。それから昨年末のTPP11発効や2月の日EU・EPA発効に至るまで、貿易自由化・グローバル化が急速に進んだ30年間でした。わが国は貿易立国であり、海外との経済連携が重要なことは当然ですし、理解もしています。一方で農業は、一産業という視点だけでなく、地方をどう守り発展させていくかという観点も非常に重要で不可欠です。このことは令和の時代になっても変わることは無いと考えています。
また、JAグループとしては、この30年間で「農業・農村の危機」、「JAの組織・事業・経営の危機」、「協同組合の危機」という3つの危機が、負のスパイラルで増幅した30年だったと感じています。一方で、近年はわが国では災害の多発などもあり、改めて協同組合の相互扶助の考え方や取り組みが見直されてきています。また、国連「国際協同組合年」や「家族農業の10年」など、世界的な評価も高まっています。私たちもこうした動きも追い風にして、危機を克服していきたいと考えているところです。
世界的な評価という点では、JAグループの総合事業も国際社会から評価されています。資料「平成31年度におけるJAグループ国際協力の取り組みについて(抜粋)」は本日の理事会で決定したものですが、JAグループは長年にわたり国際協力・国際連携に取り組んでいます。こうした取り組みもぜひ知っていただければと思います。
さて、そうしたなかで、今年は「食料・農業・農村基本計画」の見直しが行われています。私も食料・農業・農村政策審議会の企画部会の委員として議論に参画していますが、基本計画の重要なポイントは、いかにわが国の食料安全保障を確立していくかということです。
この視点は、議論のなかで盛り込んでいきたいと考えているし、JAグループとしても先月の理事会で「『持続可能な食と地域づくり』に向けたJAグループの取り組みと提案」を決定しています。今後、政策提案や広報活動など、積極的に取り組んでまいります。
そして、食料安全保障の確立のためには、農業・農村を持続可能なものとすることが不可欠です。持続可能な農業・農村にしていくためには、大規模農家から中小農家まで、多様な担い手が協力しあい、地域住民・消費者の方々とも連携しながら、地元の農業を支えていく必要があります。こうした助け合いは農業の維持はもとより、地域のコミュニティを活性化することにもつながりますし、そこから郷土愛も生まれるものと思っています。
私自身も毎年、地元での共同作業、道普請や土手焼きなどに参加していますが、改めてこうしたことを感じています。だからこそ、企画部会での議論は、多種多様な農業関係者から幅広く意見を聴取すること、現場実態をふまえたうえで基本計画に入れ込むことだと考えています。
令和の時代は、今より一層多様化が進み、重視される時代になるでしょう。そうした時代の動きも見きわめて、持続可能でよりよい社会を創っていくために私たちも行動していきます。
以上