第44回 都市に農地がある豊かさ

中家徹のピンチをチャンスに!

中家徹会長によるコラム。「週刊新潮」にて2020年3月まで連載。

 11月2日は「都市農業の日」だ。11月は各地で収穫を祝う農業祭の時期であることに加え、2日と3日は「東京都農業祭」が開かれ、農林水産大臣賞を決める農畜産物品評会が行われることなどにちなんで、JA東京中央会が制定した。都市農業への注目を高め、ひいては日本の農業全体を盛り上げたいとの願いも込められている。

 都市農業は「市街地及びその周辺の地域において行われる農業」と定義される。皆さんの身近にもあるかもしれないが、都市農業は、全国の農業産出額の3割を占め、都市住民への新鮮な農産物供給に大きな役割を果たしている。さらに、街の中に潤いや安らぎを与える機能や、気温の上昇を抑えて涼しい空気をつくったり水をきれいにしたりする環境保全機能、農業体験ができる場を提供することで食や農を学べる機能、災害に備えたオープンスペースの確保で周辺の住民を守る防災機能など、多面的な機能を備えている。

法制化が都市農業の振興に

 1960年ころから始まった高度経済成長期には農村から都市へ人口が流出し、広大な農地が住宅地へと変貌を遂げた。しかし、1999年に食料・農業・農村基本法が制定されたことを受けて、都市農業を守る機運が高まってきたように思う。こうした機運に弾みをつけたのが2015年に成立した都市農業振興基本法だ。それまでは市街地にある農地は宅地化すべきものとされてきたが、人口減少が進む中で開発圧力が低下し、良好な都市環境の形成に資するものとして政策の転換が図られた。最近では市民農園にサービスを充実させた体験型農園も子育て世代に人気が高く、農業への関心を持ってもらう絶好の機会になる。都市農業を営む農業者の悩みの種となる農機の稼働音や消毒の際などに寄せられる住民からの苦情や誤解も、農業体験で理解が得られるかもしれない。

 おりしも、東京23区内にある農地の約4割(約200ヘクタール)を占める練馬区は、11月29日から3日間の日程で「世界都市農業サミット」を開催する。ニューヨーク、ロンドン、ジャカルタ、ソウル、トロントから農業者や研究者、行政担当者らを招き、練馬の都市農業の魅力と可能性を世界に発信する。各都市の都市農業を紹介する国際会議や伝統野菜「練馬大根」の引っこ抜き競技大会、マルシェなど多彩なイベントが用意されている。イベントを契機に都市農業の重要性が国内外で認識されることを願っている。

(「週刊新潮」令和元年11月21日号)

「練馬大根」の引っこ抜き競技大会は、いまや練馬の冬の風物詩。普通の大根んの3~5倍の力が必要だ。(写真提供:練馬区)

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