かく言う私も、駆け出しの頃は失敗の連続だった。そんな私が実践していたのは、どんな小さなことでもメモを取るという作業だ。分からないことは何でも聞いて、一度聞いたことは二度と聞くまいと心に誓い、上司や先輩に教えてもらったことはその都度メモを取って、引き出しにしまっていた。1年目は増える一方のメモだったが、2年目、3年目と時間を重ねるうちにだんだん減っていった。「記憶より記録すること」の大切さを実感した。
時間は全ての人に平等に与えられている。社会に出れば働いている時間が睡眠時間を除き、一生のうちで最も長く過ごすことになる。だからこそ、働く時間が有意義で楽しくなければ人生そのものが楽しくならない。しかし、最初から楽しい仕事などない。人間関係は難しいし、分からないことだらけだ。自分の思い通りにもならない。だからといって諦めてはいけない。仕事の楽しさは人から与えられるものではなく、自分から作り出していくものだ。苦難を乗り越えるからこそ、人生が豊かになるのではなかろうか。
厳しい時代での出発となるが、ホスピタリティの精神を忘れず、相手を第一に考えることを常に心がけてほしい。新社会人の皆さんを心から応援している。
(「週刊新潮」平成30年4月19日号)