第11回 いよいよ梅本番

中家徹のピンチをチャンスに!

中家徹会長によるコラム。「週刊新潮」にて2020年3月まで連載。

 今年も梅の収穫シーズンを迎えた。いろいろな種類がある中で、最も早いのは小梅。5月中旬から収穫が始まる。次いで「青いダイヤ」とも呼ばれる梅酒用の古城梅(ごじろうめ)、おなじみの南高梅(なんこううめ)と続く。6月になると南高梅が店頭に並ぶが、梅はこの時期にしか買えない、まさに季節商材。農家にとっても収穫の喜びを実感でき、1年間の苦労が報われる時でもある。

6月6日は「梅の日」

 私の地元の和歌山県田辺市を含む1市5町の自治体とJAなどでつくる「紀州梅の会」は、6月6日を「梅の日」として日本記念日協会に申請し、2006年6月に登録された。この記念日の由来は、室町時代末期の1545年にさかのぼる。

 日照りが続いて人々が苦しんでいた時、後奈良天皇が京都の賀茂神社に梅を奉納し、祈りを捧げた。すると、途端に恵みの雨が降り出して五穀豊穣をもたらしたことから、この天恵の雨を「梅雨」と呼んで梅に感謝し、災いや疫病を除いて福を招く梅を「梅法師」と呼んで贈り物にするようになったと言われている。後奈良天皇が奉納した日が6月6日だったという故事にちなみ、この日を「梅の日」に制定した。それ以来毎年、「梅の日」に合わせて全国各地でさまざまなイベントを開催し、魅力を発信している。

 梅には健康に良い栄養素や成分が多く含まれている。例えば、主成分のクエン酸は乳酸の蓄積を防ぎ、疲労防止や回復する働きを持つ。クエン酸は脂質を減らし血液の流れをサラサラにする効能もある。またベンズアルデヒドという成分が殺菌や抗菌効果を発揮することも良く知られている。近年では胃に障害を与えるヘリコバクター・ピロリ菌の動きを妨げたり、血糖値の急激な上昇や肥満を抑えたりする効果も分かってきた。梅には食べて元気になる力が詰まっているわけだ。

 そんな梅だからこそ、皆さんには健康づくりのために、ぜひ召し上がってほしい。私の一押しはシロップ。洗って水分を取った梅を24時間以上冷凍庫で凍らせる。その後、ストックバッグや広口ビンなどに冷凍した梅と氷砂糖を入れて密閉して冷暗所で保管すると、1週間でシロップが出来上がる。水や炭酸水、牛乳で割ってもおいしく、残った梅はジャムにもできる。これなら子供も飲めるし、一緒に作れば手作りの楽しさも膨らみ、食育にもなる。詳しいレシピは、JA紀南のホームページをご覧あれ。

(「週刊新潮」平成30年5月 31日号)

昨年の「梅の日」に催された「和歌山の梅フェア」(東京・大田市場)では、紀州梅干しの試食展示、梅ジュースの試飲を実施。関係者で賑わった。

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