第14回 グリーン・ツーリズムのススメ

中家徹のピンチをチャンスに!

中家徹会長によるコラム。「週刊新潮」にて2020年3月まで連載。

 待ちに待った夏休み。皆さんはどのような計画を立てられただろうか。未定の方には、ぜひグリーン・ツーリズムをお薦めしたい。

 グリーン・ツーリズムは農山漁村にゆっくり滞在し、体験を通じてその土地の自然や文化、地域住民との交流を楽しむ余暇活動だ。発祥はヨーロッパだが、日本でも従来の観光地を巡るだけの旅行から、豊かな自然、その土地ならではの食事や伝統文化に触れ、自ら体験ができる旅に関心が高まっている。農家レストランでの食事や直売所での買い物、歴史のある古民家やいろりのある農家民宿での宿泊、農作物の収穫や搾乳体験、そば打ちやスイーツなど特産を使った加工品作りなど、グリーン・ツーリズムの体験内容は地域の特色が表れて、実に多彩だ。

 私の地元の和歌山県田辺市にも、2007年に地域住民が出資して作った「秋津野ガルテン」という都市と農村の交流を目指したグリーン・ツーリズム施設がある。廃校になった小学校の校舎を活用し、校庭内には地元のお母さんたちが作るスローフード・バイキング料理を提供する農家レストランや宿泊施設、お菓子作りを体験できる工房や特産のミカンを紹介する資料館もある。農家レストランは、地元の食材を使ったお母さんたちのこだわりメニューが30種類も楽しめるとあって、人気が高い。癒しを求める人が集まることで刺激を受けたのだろう。近隣には農家民宿を始める農家も出てきた。

農山村の宝物を生かして

 最近、「関係人口」という言葉をよく耳にする。文字通り「地域に関わってくれる人口」のことで、頻繁に地域に通ってくれたり、通わずとも何らかの形でその地域を応援してくれたりする人たちを増やす重要性が指摘されている。

 その土地で暮らす人には気付かない宝物が、地域にはたくさん埋もれている。関係人口が増えれば、埋もれていた宝物の価値に地域住民が気付くきっかけになるし、宝をうまく生かせば少子高齢化が進む地方において新しい余暇活動の提案や地場産業の育成、空き家の活用など地域活性化につながるアイデアが生まれるかもしれない。

 グリーン・ツーリズム人気を定着させ、さらに発展させるには受け皿づくりが欠かせない。そこでJAと行政とがタイアップし、地域の魅力を発信したい。日本人に限らず、平成29年には2869万人も訪日した外国人観光客にも日本の食と農の価値や素晴らしさが伝わるのではないだろうか。

(「週刊新潮」平成30年7月18日号)

熊野古道を歩く参拝客や観光客の拠点としても脚光を浴びる秋津野ガルテン。

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