第15回 多様な世界の仲間たち

中家徹のピンチをチャンスに!

中家徹会長によるコラム。「週刊新潮」にて2020年3月まで連載。

 6月にアメリカ・アラバマ州バーミングハム市を訪ねた。国際協同組合同盟(ICA)の理事会が開かれたので、私は日本選出の理事として参加した。ICAは世界100カ国以上から約300の協同組合全国組織が参加している。加盟組織の総組合員は10億人を超えると言われ、世界最大の非政府組織(NGO)だとされる。理事会では開催国のアメリカから、102年の歴史をもつ全国協同組合ビジネス協会(NCBA)が、自国の発展に協同組合がいかに大きな役割を果たしてきたかを報告した。私が驚いたのは、公民権運動を支える大きな力になったのが協同組合だったということだ。

 アメリカ南部に位置するアラバマ州は、国内でも最も激しく、最後まで人種差別があったという。半世紀にわたり、公民権運動に取り組んできた男性の話を聞く機会があった。彼は人種に関係なく、全ての人々が平等であることを訴え続けることができたのは、全ての組合員が平等である協同組合と密接につながって活動できたからだと熱く語った。協同組合の底知れぬ力をあらためて知り、感慨深かった。

 世界の協同組合には教育、葬祭、自動車修理など実に多彩な組織がある。ICA理事として名を連ねているカナダの葬祭組合は、高価で不明瞭な葬儀費用を抑えようと、市民が出資し合って組合を設立。民間の葬儀社と比べ、原価に近い費用で葬儀ができるとして高い支持を集めていると、参加した女性理事は誇らしげに話してくれた。

 このように協同組合の仲間たちは、世界中でその事業や活動を通じて組合員の願いを実現している。

小さく生んで大きく育てる

 日本も負けてはいない。1956年に協同組合の連携組織として、日本協同組合連絡協議会が設置されていたが、さらに連携を強めて地域で果たす役割や機能の可能性を広げようと、今年4月に一般社団法人日本協同組合連携機構(JCA)を創設した。農協、生協、漁協、森林組合、信用組合、医療生協、労働者協同組合など、日本の協同組合の全国組織19団体が加盟している。

 4月に産声を上げたばかりだが、これからたくさんの課題に取り組み、未加盟の組織が共に活動をしたいと感じられるような組織にしたいと思う。協同組合が連携して価値の共有・発信をすれば、行き過ぎた資本主義や競争原理だけでは解決できない課題を乗り越えられるのではないか。まだ小さいけれど、大きく育てていきたい。

(「週刊新潮」平成30年8月2日号)

アラバマ州は、キング牧師が公民権運動を開始した地。州内最大の都市バーミングハムの公民権博物館では、その運動の歴史を学ぶことができる。

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