第17回 被災者に寄り添うJAに

中家徹のピンチをチャンスに!

中家徹会長によるコラム。「週刊新潮」にて2020年3月まで連載。

 この度の平成30年7月豪雨により、被災された皆様ならびにそのご家族の皆様に心よりお見舞い申し上げ、皆様の安全と被災地の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げたい。そして、復興に尽力されている皆様には安全に留意され、ご活躍されることを切にお祈りしたい。

 被災地ではJAの店舗や選果場なども甚大な被害を受けた。農林水産省によると、平成30年7月豪雨による農林水産関係の被害額は約2713億円(平成30年8月16日現在)にも上る。

 私も先月、愛媛にお邪魔した。ドローンを使った上空からの映像には、鋭い爪で引っかいたような跡が山肌の随所にあった。大量の土砂がそこに住む方々の命や住まい、代々受け継がれてきた畑を一瞬にして飲み込んだ事実を目の当たりにした。瀬戸内海を見下ろす風光明媚な土地はミカンの大産地だ。あと数カ月もすれば収穫できたミカンの木が無残にも土砂に流され、農家は生活の糧を失った。私も和歌山の同じミカン農家として胸が苦しかった。それと同時にある不安が脳裏をよぎった。今回の豪雨が原因となり、離農に拍車がかからないか、という懸念だ。

 ミカンに限らず永年性作物の果樹は野菜に比べ、収穫量が元に戻るまで数年かかる。昨年と一昨年は市場価格が高値で推移し、農家の生産意欲が高まっていた。そんな矢先の豪雨被害。段々畑に設置していたかん水や防除に使うスプリンクラー、収穫したミカンを運ぶ農業用のモノレールも被害を受け、復旧には人手も時間も要する。意欲があっても収入が得られるまでの時間を乗り越えられなければ、農家の中には営農を断念する人が出てくるかもしれない。そうなると生産基盤の弱体化を招き、食料自給力も低下してしまう。

JAグループ挙げて被災地支援

 我々JAグループは、組織を挙げて被災地支援を行っており、全国から被災県へ、支援物資や義援金が贈られている。また、全国のJA職員で構成するJAグループ支援隊を特に被害が大きい広島県へ派遣し、JA施設の土砂撤去や社会福祉協議会を通じた一般家屋の清掃などを行っている。愛媛県にも支援隊の派遣が決まり、今後とも地元の要望に応じて、物的・人的両面から息の長い支援を続けていく。支援隊は平成26年豪雪や東日本大震災、熊本地震でも力を発揮した。助け合いの組織、協同組合だからこそできる心が通った支援をこれからも続けるつもりだ。

(「週刊新潮」平成30年9月6日号)

JA広島中央(東広島市)の中部ライスセンターへ流入した土砂を撤去作業中のJAグループ支援隊。

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