第18回 人生100年時代を見据えて

中家徹のピンチをチャンスに!

中家徹会長によるコラム。「週刊新潮」にて2020年3月まで連載。

 先日、厚生労働省が2017年簡易生命表を発表した。それによると日本人の平均寿命は、男性81.09歳、女性87.26歳でいずれも過去最高を更新した。戦後、統計を取り始めたのは1947年で終戦直後。この時の平均寿命は男性50.06歳、女性は53.96歳だったので、この70年で寿命は飛躍的に伸びた。

 これとは別に厚労省が算出する「健康寿命」がある。「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」を示すもので、男性は72.14歳、女性は74.79歳だった。2025年には日本の団塊の世代が75歳以上になる。高齢化による医療や介護などの給付費が国の財政を圧迫するのが見込まれる中で、平均寿命と健康寿命の開きをどれだけ縮められるかが、大きな課題になるだろう。

 我々JAグループには、病院や診療所、介護保険施設を運営する厚生農業協同組合連合会(厚生連)がある。32都道県にあり、全国で病院が108、診療所が65、介護老人保健施設が31、訪問看護ステーションが101、看護師養成所(専門学校、専修学校など)は15と、それぞれの運営を手掛けている。大きな特徴は108の病院のうち、46病院は人口5万人未満の地域で運営していることだ。へき地医療拠点病院に指定されている数は24に及び、この数は赤十字病院や国立病院よりも多い。厚生連病院がいかに過疎地域の医療を支えているか、実態をご理解いただけたかと思う。

健康長寿プロジェクトを展開

 平均寿命が延び、人生100年時代と言われる。100年生きることを前提に、生き方の見直しを提唱した本がベストセラーになったことも相まって、豊かな人生を送るための議論が活発だ。我々JAグループもいち早く、組合員や地域の方々が健康で豊かな老後を過ごせるように「JA健康寿命100歳プロジェクト」を展開している。介護予防を目的としたJAグループオリジナルの体操の普及や認知症サポーターの養成講座、口腔ケアなどの勉強会を各地で開催。地域を支えるJAとして、医療・福祉を通じて地域住民の健康づくりのお手伝いをしているのだ。

 高齢化が進む農村部には、生業とせずとも野菜作りなどを生きがいとして、生き生きと暮らすお年寄りがたくさんいる。私も週末、和歌山に帰って畑に出ると、気持ちがすっとする。人生100年時代において、JAグループの取り組みと共に農業・農村の多面的機能が重要な役割を発揮すると信じている。

(「週刊新潮」平成30年9月20日号)

※救急患者数は休日・夜間の数値 (平成29年6月病院運営実態分析、28年度厚生連病院実績から引用)

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