わが国は食料輸入大国だ。2016年の農林水産物の輸入額は8兆5000億円。これは国内の農業総産出額とほぼ同じだ。こうした実態を裏付けているのが、38%という低い食料自給率。6割以上を外国産で賄っているのが現状だ。
気候変動によって世界の食料需給がひっ迫したら、これまで通りに安定的に輸入できる保障は何もない。しかも世界人口は爆発的に増加している。経済力に任せて世界中から食料を買える時代ではなくなりつつあるのだ。
話題を国内に戻そう。今年の夏、メディアは猛暑の影響で野菜が高騰したと報じた。しかし、価格が高いからといって農家の収入が増えるわけではない。野菜が不足して高騰するということは、多くの農家が種をまいても収穫できなかったということなのだ。消費者の皆さんには、そうした視点も持っていただけたら幸いだ。
また、生産現場では農業に携わる人が減り、高齢化が加速している。1985年の農業就業人口は542万人だったのに対し、2015年は209万人。この30年で6割も減った。基幹的農業従事者の平均年齢は67歳で、わずか20年で約7歳上がった。いかに担い手不足で高齢化が進んでいるか、お分かりいただけただろうか。
地球規模の気候変動と生産基盤の脆弱化は、私たちの食を脅かす。食はまさに安全保障。わが国の食と農のこれからを、消費者の皆さんと共に考え、行動したい。
(「週刊新潮」平成30年10月18日号)