第23回 国土を守る島を支える

中家徹のピンチをチャンスに!

中家徹会長によるコラム。「週刊新潮」にて2020年3月まで連載。

 早いもので今年も師走が近づいてきた。12月は年末年始を迎える準備で皆さん忙しく過ごされると思うが、沖縄では砂糖の原料となるサトウキビの収穫が本格化する。

 サトウキビは沖縄本島と離島部で生産され、県全体の耕地面積の5割を占める。県内の農家の7割がサトウキビを栽培しているが、これには理由がある。沖縄は台風などの被害を受けやすく、干ばつもあるので栽培作物が限られる。そのなかでも、サトウキビは台風や強風などで倒れても立ち上がり、干ばつによる水不足で葉が枯れたとしても雨が降れば新しい葉を出すので、自然災害に強い。沖縄にとっては、代えがきかない、地域の経済・社会を支える重要な基幹作物なのだ。

 南大東島にある製糖工場の煙突には「さとうきびは島を守り島は国土を守る」というフレーズが書かれている。国産の砂糖は日本になくてはならないもので、その原料の一つであるサトウキビは国土をも守っているという事実を言葉にしたものだ。とても重要なことを言い当てていると思う。

離島のインフラを支えるJA

 離島の多くは高齢化、過疎化の悩みを抱え、金融機関といえば、郵便局かJAだ。南大東島にはJAおきなわ南大東支店がある。島の金融機関としての機能を果たすほか、ガソリンスタンド、スーパーなども運営しており、JAは生活のインフラとして暮らしを支えている。JAおきなわは、北は伊平屋島、東は北大東島、南は波照間島、西は与那国島といった離島にも支店などの施設を展開している。沖縄に限らず、小笠原諸島にはJA東京島しょが、奄美群島にはJAあまみが、隠岐の島にはJAしまねがそれぞれ店舗をもっている。

 私の地元である和歌山県JA紀南の管内にも紀伊大島がある。ここは昔からキンカンの産地で、JA紀南は「樫野(かしの)金柑加工場」を運営し、とれたてを現地でマーマレードやジャムなどに加工している。高齢化でキンカンの生産量も年々減っているが、我々はこれからも島の特産を守っていきたいと思う。過疎地域なので経営的に厳しくとも、そこで暮らす人がいて農業を営んでいる限り、JAは地域の人々に寄り添い、暮らしを支え続けている。これこそが協同組合の姿なのだ。

 離島で農業が営まれているから、国土が保たれている。農業は食料安全保障はもとより、国土の保全、安全保障にも直結していることもぜひ知っていただきたい。

(「週刊新潮」平成30年12月6日号)

地域経済を支え、国土を守っている南大東島の大東糖業の煙突。(写真提供:大東糖業株式会社)

一覧に戻る
ページトップへ