第26回 節目の年

中家徹のピンチをチャンスに!

中家徹会長によるコラム。「週刊新潮」にて2020年3月まで連載。

 新しい年が始まった。毎年、私は和歌山県田辺市にある自宅から車で10分ほどの距離にある山の尾根から妻と共に初日の出を拝んでいる。一年の無事と豊作を祈っているが、今年は例年にも増して特別な年になると感じている。

 2019年を漢字一文字で表すとすれば、私は迷わず「節」を挙げる。最も大きな節は、平成が終わり、5月から新しい年号になることだ。3年に1度のJA全国大会が3月に開催され、食料・農業・農村基本計画の見直しに向けた議論も本格化する。さらに9月には全国農業協同組合中央会(JA全中)が一般社団法人になり、農協改革集中推進期間が5月で終了する。JAグループにとって今年は大小さまざまな節を持つ、まさに節目の年になるだろう。

家族農業に大きな追い風

 国際的にも大きな意味のある年の幕開けだ。今年は国連の「家族農業の10年」が始まる。国連は国際的な関心を高め、取り組みを促すために特定の事柄を「国際年」とし、その中でも特に重要で時間をかけて取り組むべき事柄を「国際の10年」に定めている。2014年は「国際家族農業年」だったが、改めてその意義・重要性が理解され、今年から10年に格上げされて再登場となった。

 2015年9月に開催された国連サミットでは、2030年までに誰もが暮らしやすい世界にするための17項目に及ぶ「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択された。2番目の目標には「飢餓を終わらせ、食料の安定確保および栄養改善を実施し、持続可能な農業を促進する」を掲げ、これを達成する手段として家族農家や小規模生産者を挙げている。食料の安定供給には、企業経営や大規模農業と同様に、こうした存在が不可欠だ。農業にはそのほかにも地域の維持、環境や国土の保全、文化の継承など、多面的な機能がたくさんある。飢餓を撲滅するには食料安全保障の確立が必須で、どの国においても国内農業を持続可能なものにしなければ、目標は絵に描いた餅になってしまう。

 歌手の北島三郎さんに『竹』という歌がある。その歌詞の中に「雪の降る日も雨の日も 竹は節目で 伸びてゆく」という歌詞があるが、我々JAグループも竹のように節目で伸びていくという考え方で前に進まなければならないと強く思う。世界中で吹き始めた風を追い風に、命を育む食と農の重要性を国民の皆さんと一緒に考え、取り組む一年にしたい。そのために今年も全力投球する。

(「週刊新潮」平成31年1月24日号)

今年は一大転機の年。身の引き締まる思いで、書き初めの字にも力がこもる。

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