第33回 組合員の声を改革の起点に

中家徹のピンチをチャンスに!

中家徹会長によるコラム。「週刊新潮」にて2020年3月まで連載。

 我々JAグループは今、「創造的自己改革の実践―組合員とともに農業・地域の未来を拓く―」をスローガンに掲げ、取り組みを加速させている。その一つに「JAの自己改革に関する組合員アンケート」がある。これは原則として全国のJA組合員を対象に、昨年12月から約1年かけて行うアンケートだ。これまで進めてきた自己改革に対して組合員の評価を計る物差しとなる。

 JAの組合員には、「正組合員」と「准組合員」の2種類がある。「正組合員」は農業を営む人または法人。正組合員になるためには農業者である必要があり、耕作面積や農業従事日数などJAごとに基準を設けている。一方の「准組合員」は農業以外の仕事をしていても、JAのある地域に住んでいれば、正組合員同様に出資金を払い、手続きをすることで加入できる。

 正組合員も准組合員も、JAの様々な事業サービスや施設の利用が可能だ。しかし、准組合員は総会での議決や役員選挙への投票といったJAの運営には関与できない。これはJAが農業者の意思に基づき事業や組織について決定することができるようにするためだ。運営には直接関与できないが、地元の農畜産物を買い支えてくれたり、事業を利用してくれたり、地域を支えるという意味では地域農業やJAの応援団なのだ。

 組合員アンケートはこうした正組合員と准組合員の全てが原則として対象で、対象者数は1000万人近くに達する見込みだ。総務省が行う国勢調査は約5345万世帯が対象なので、いかに大規模な調査であるかがお分かりいただけるのではなかろうか。

未来を拓く組合員との対話

 今回の調査ではJAの総合事業や准組合員制度に対する考え、自己改革への評価などを尋ねている。昨年12月からこれまでの期間で、既に数百万人もの組合員宅にJA職員が足を運び、調査を実施している。

 結果が出るのはもう少し先のことになるが、中には厳しい評価もあるだろう。しかし、組合員の声に耳を傾けJA運営に生かしていかなければ、日本の食を守ることはできない。組合員との対話は、まさに協同組合の原点

なのだ。労力も時間もかかるが、組合員との対話は極めて価値のある取り組みとなる。流した汗は組合員との絆を強め、JAや地域の未来を拓き、日本の安全・安心な食を守り続けることにつながると信じている。

(「週刊新潮」令和元年5月30日号)

調査をとることはもちろん、足を運んで組合員と対話をすることが重要だ。(写真提供:JA紀南)

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