第36回 途上国と強める農の絆

中家徹のピンチをチャンスに!

中家徹会長によるコラム。「週刊新潮」にて2020年3月まで連載。

 JAグループは5月、開発途上国での農業振興を支援しようと、国際協力機構(JICA)との連携協定を締結した。JAの若手職員や青年農業者を現地に派遣し、農業者の所得向上を通じて国際貢献をするのが目的だ。

 我々が取り組んできた農業者の組織化や産地づくり、農産物販売などの経験やノウハウは、協同組合の成功事例として世界的にも高い評価をいただいているので、農業生産がGDPの多くを占める途上国の発展に貢献できると考えている。今後、関心のあるJAを募り、JICAを通じてマッチングを行っていく。第一弾は群馬県のJA邑楽舘林(おうらたてばやし)で、今夏から職員をインドネシアに派遣するが、途上国での経験は知見を広めることにもつながるだろう。

半世紀に及ぶアジアとの共生

 JAグループはこれまでも国際協力に取り組んできた。その一つが日・ASEAN包括的経済連携協定に基づく農協間協力だ。2012年から毎年、JAの営農指導員などをASEAN(東南アジア諸国連合)加盟国に派遣し、現地の依頼を受けて研修会の開催や圃場での指導を行っている。小欄でもご紹介したJAグループの国際協力機関であるアジア農協振興機関(IDACA)も、1963年の創設以来、半世紀以上に渡ってアジア・アフリカ地域の農業担当省庁・農業団体関係者を研修生として受け入れてきた。その数は133の国と地域から約6500人にも上る。また、5月には新潟市で行われた20カ国・地域(G20)農相会合に出席したタイの農業・協同組合大臣が千葉市にあるJA千葉みらいの直売所「しょいか〜ご」を視察するなど交流が広がっている。

 私は今後、JAグループが大切にしてきた価値観も世界に発信したいと思う。食料の安定供給はもちろん、助け合いで人と人をつなぐ協同組合の思いを伝えることは、国連が定めた持続可能な開発目標(SDGs)を世界的に達成することにつながるはずだ。

 折しも毎年7月の第一土曜日は国連が認定する国際協同組合デー。今年はSDGsの目標の一つである「働きがいのある人間らしい仕事」をテーマに、東京でも7月9日に記念集会を開催する。国際協力を通じ、世界中の協同組合や農家のために力を尽くしたい。

(「週刊新潮」令和元年7月11日号)

日・ASEAN包括的経済連携協定に基づき、マレーシアでの現地の農家を対象に指導中の専門家。

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