第37回 食の安全を確保するGAP

中家徹のピンチをチャンスに!

中家徹会長によるコラム。「週刊新潮」にて2020年3月まで連載。

 世界中が注目するスポーツの祭典まで、あと1年となった。選手はもちろん、日本を訪れる外国人観光客がさらに増えると見込まれることから、新鮮でおいしく、しかも安全・安心な日本産農畜産物の魅力を発信できる絶好の機会になると期待を寄せている。日本の食を支える我々JAグループも、海外からのお客様を食で「おもてなし」したいと思う。

 トップアスリートたちに提供される食材は、調達基準が厳しく定められているが、その一つにGAP(農業生産工程管理)認証を受けているということがある。GAPはGood Agricultural Practiceの略。農産物の安全を確保するだけでなく、環境保全や労働安全、人権保護、農業経営管理など多角的な取り組みを行った上で、第三者機関の審査で正しく実施されているかが確認されて初めて認証を受けることができる。

 認証を得るには200項目を超える基準を満たさなければならないものもあり、取得にはコストもかかる。だからといって、その労力やコストを販売価格にそのまま転嫁できないので、生産者にとってハードルは高い。このため、食の安全に対する意識に応えられるよう、JAグループは2017年から支援事業に乗り出し、GAPの普及・実践に取り組んでいる。全国連(全農、共済連、農林中金、全中)が連携して支援チームを設置。認証取得を目指す全国の産地を後押ししており、現在、約20産地に支援員が入って、取得に向けたサポートをしている。

帆掛け船に櫓を押す認証取得

 最近は農業高校でも認証を取得するところが増えている。農業高校生の積極的な姿勢は私達も大いに見習わなければならない。

 また、都道府県レベルでは宮崎県で、JA宮崎経済連や県内の複数JAがGAPの中でもハードルが高いものの一つとされるグローバルGAPのグループ認証取得に向けて取り組んでいる。

 人口減少などを考えると、これからの農業は輸出も重要になってくる。我々が力を入れてきた安全性確保の取り組みに、第三者機関のお墨付きが得られたら帆掛け船に櫓を押すことになる。JAグループはGAPも含めて、安全・安心な農畜産物をこれからもお届けしていく。

(「週刊新潮」令和元年7月25日号)

GAPの認証は第三者の目で厳しいチェックが実施される。JA全農みやぎに出荷するトマト農家(グローバルGAP取得済)の圃場では、認証の更新に向け、検査員の調査が実施されていた。

一覧に戻る
ページトップへ