第39回 列島をつなぐ食のバトン

中家徹のピンチをチャンスに!

中家徹会長によるコラム。「週刊新潮」にて2020年3月まで連載。

 8月31日が何の日か、ご存じだろうか。全国青果物商業協同組合連合会など9団体が、1983年に語呂合わせから制定した「やさいの日」だ。野菜の栄養価値や機能性を再認識してもらい、消費拡大を図るのが狙いだが、厚生労働省が掲げる成人1日当たりの野菜摂取量の目標350グラムに対し、実際に食べられているのは288.2グラムに過ぎない(2017年国民健康・栄養調査)。

 この時期、店頭にはキュウリやナス、トマト、カボチャなどの夏野菜が並び、食卓を彩る。夏野菜に限らず、今はいろいろな野菜が一年中食べられるので、昔に比べて季節感が薄れているかもしれないが、季節を問わずに野菜を安定的に供給できるのは、産地が連携し、生産体制を組んでいることが大きい。

南北を駆け抜ける産地間リレー

 南北に長く、標高差がある日本の地形を利用し、多くの野菜が周年で供給されている。春や秋は主に関東を中心に、夏は北海道、東北や群馬、長野といった高冷地、冬は東海から四国、九州などの温暖な地域に産地が変わっていく。例えば夏の味覚を代表するスイカ。春に熊本から出荷が始まり、千葉、山形、北海道へと北上する。こうすることで長い期間、安定的に供給できるというわけだ。この仕組みは産地間リレーと呼ばれ、供給量はもちろん、価格の安定にも貢献している。

 しかし、台風や干ばつといった天候の影響で産地がダメージを受けると産地間リレーにも影響が及び、品薄になって価格が高騰する。反対に出荷時期が重なったりして、供給量が急激に増えると価格が暴落する。種や肥料などのコストすら回収できないほど市場価格が暴落した場合、農家は出荷を断念することもある。丹精込めて育てた野菜の出荷を諦めざるを得ない決断は、まさに断腸の思いだ。天候による影響は避けられないにせよ、産地間リレーは安定供給に加え、農業者が安心して営農を続けられるよう、産地を守るために必要な取り組みでもあるのだ。

 我々JAグループも毎年、「やさいの日」にちなみ、PRイベントで国産野菜の良さを発信している。今年はレシピ動画メディア「デリッシュキッチン」で、夏野菜を使った料理の動画を8月26日から配信している。また、新宿高島屋では、8月31日に収穫体験など野菜に親しむイベントも開催する予定だ。夏休み最後の思い出作りに、ご家族で足を運んでみてはいかがだろうか。

(「週刊新潮」令和元年9月5日号)

「デリッシュキッチン」で紹介される「丸ごと麻婆トマト」。旬のトマトを使った暑い夏にぴったりの辛口メニューだ。
※レシピはこちらから

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