第47回 新時代に架ける虹

中家徹のピンチをチャンスに!

中家徹会長によるコラム。「週刊新潮」にて2020年3月まで連載。

 令和元年も残りわずかとなった。今年は天皇陛下の皇位継承に伴い、様々な皇室行事が行われた。私もJAグループの代表として「即位礼正殿の儀」(10月22日)や「饗宴の儀」(10月31日)に参列した。

 既にご承知の通り、「即位礼正殿の儀」は「即位の礼」の中心儀式で、国内外の代表が参列する中、天皇陛下が即位を公に宣言される儀式だ。あの日は台風から変わった温帯低気圧の影響で、一時は横殴りの雨が降るほどだった。しかし、儀式が始まって陛下がお出ましになった途端に雨が止み、雲の合間から青空がのぞいた。その時、私は2011年5月22日を思い出した。あの日、私の地元・和歌山県田辺市では全国植樹祭が開かれ、今の上皇さまと上皇后さまがご臨席された。私はJAグループ和歌山の副会長として参加していたが、そのときも雨だった。ところが両陛下が到着されると、空が一気に晴れ渡った。植樹祭に続き「即位礼正殿の儀」でも、私は同じような光景を目にして感慨に耽った。

 もう一つの「饗宴の儀」は天皇皇后両陛下がともに祝宴に臨み、即位を披露し祝福を受けられる儀式で、今回のご即位では4日に分けて行われ、私は最終日に参列した。私が通された皇居・宮殿の豊明殿に両陛下がお出ましになると、その場がさらに厳かになり、雰囲気が変わったように感じた。両陛下は私のいた場所にも来られて、ごく短い時間だったが歓談された。

「饗宴の儀」のメニューは伝統的な和食が振る舞われていた。食材の多くは国産だと思うが、大嘗祭のお供えとして全国から届けられた品々と同じく、日本の第一次産業に携わる生産者の自信作だ。大嘗祭で使われた新米は、栃木県と京都府で栽培され、これらが神々に供える新米や酒となり、祝宴の料理にも使われる。私が参列したのは一部に過ぎないが、一連の皇室行事が日本古来の農耕文化に基づくことを深く感じた。

平和を願う助け合いのシンボル

 後で知ったのだが、「即位礼正殿の儀」が始まった直後、東京都心には虹がかかったそうだ。実は国際協同組合同盟(ICA)のシンボルもながらく虹が使われてきた。人類の平和と世界の協同組合発展の願いが虹に込められている。その虹が、令和という新時代の幕開けを祝うタイミングで現れたことに不思議な巡り合わせを感じたのは、私だけではないだろう。あの虹が新年も全ての人にとって夢や希望、幸運の架け橋になることを心から祈っている。

(「週刊新潮」令和2年1月2・9日新年特大号)

「饗宴の儀」参列者に贈られたボンボニエール。直径6センチで高さは3センチ余り。表面には菊の御紋と鳳凰があしらわれている。

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