第48回 2020年 5つの「実」

中家徹のピンチをチャンスに!

中家徹会長によるコラム。「週刊新潮」にて2020年3月まで連載。

 令和になって初めての新年を迎えた。昨年の小欄で私は2019年を現す漢字として「節」を挙げた。令和元年になることやJA全国大会の開催、全国農業協同組合中央会(JA全中)の一般社団法人への移行など、まさに節目の年になった。

 九州北部豪雨や台風15、19号などでは多くの方が犠牲になり、国民が自然災害の恐ろしさを改めて思い知らされることとなった。農水省の調べでは台風15、19号や大雨関連の農林水産関係の合計被害額は約4200億円(12月2日時点)となっており、被害の大きさに言葉を失う。

節目を経て思うこと

 2020年の一字に私は「実」を選んだ。これにはいくつかある私の思いを込めた。1つ目は今年こそ災害や天候不順に見舞われることなく、豊かに「実」ってほしいという願い。2つ目はJA大会での決議を「実」践するとの決意。3つ目はJA役職員が意識を一つにして「誠実」で「実直」に仕事をしてほしいという期待を寄せる「実」。

 4つ目は食料・農業・農村基本に基づいて政府が中長期的に取り組むべき方針を定める食料・農業・農村基本計画が5年ごとに見直されており、今年3月に改定予定であることから、その計画を「実」行するための「実」だ。例えば基本計画に掲げる食料自給率の目標はカロリーベースで45%。しかし、現実は2018年度で37%と過去最低に落ち込んでいる。計画倒れになれば、農業・農村はますます疲弊してしまう。切羽詰まった状況だ。

 5つ目は世界中が注目するスポーツの祭典が日本で行われるので、選手たちには「実」力を発揮してほしいというエール。そして日本を訪れるたくさんの外国人観光客には、日本の新鮮でおいしく、安全・安心な農畜産物を食べて、旅をより強く印象付けてもらいたい。それが日本の農畜産物の魅力を発信し、食を支えるJAグループの思いを「実」現できる絶好の機会になると思う。

 昨年はラグビーのワールドカップが自国開催され、初の8強入りを果たした日本代表のスローガン「ONE TEAM」が新語・流行語大賞に選ばれた。選手一人一人に役割があり、チーム一丸で前に突き進んでトライする。あのチームプレーは、我々JAグループが大切にしている協同組合の価値観に非常に通じるものがある。

 2020年もキックオフされた。1つでも多くのトライを目指し、今年も果敢に挑むJAグループであり続けたい。

(「週刊新潮」令和2年1月23日号)

2020年の一字に「実」を選んだ中家徹会長。その思いが「実」らんことを。

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