第49回 持続可能な食と地域をつくる

中家徹のピンチをチャンスに!

中家徹会長によるコラム。「週刊新潮」にて2020年3月まで連載。

 2020年を迎え、皆さんはどんな目標や願いを掲げられただろうか。私の願いの一つは、前稿でも今年の一字「実」として取り上げたが、現在改定が進む新しい食料・農業・農村基本計画が着実に実践され、成果を挙げていくことだ。私も審議会のメンバーとして参画しているが、いかに安全・安心な食料を供給し続けるか、農家の営農と生活、農村の姿をどう描くか、そのために打つ手は何か。改定を3月に控え、新たな基本計画には具体的な道筋が求められる。

 食料・農業・農村基本計画は、1999年に制定された食料・農業・農村基本法に盛り込まれた基本理念にもとづいて着実に進めなければならない。基本理念は①食料の安定供給の確保、②多面的機能の発揮、③農業の持続的な発展、④農村の振興の4つ。

 食と農の憲法ともいえる基本法が制定されてからも、食を取り巻くリスクは高まり続けている。食料自給率(カロリーベース)は過去最低に落ち込んでいるし、自然災害は頻発している。また、農業生産基盤の根幹を成す農家は高齢化し、農地は減少している。TPPなど国際化が進展するなかで、世界人口は増加し、食料需要は高まる一方だ。こうした現状をふまえて、新たな基本計画では、平時より質と量の両面で食料安全保障を確立することが不可欠だと考えている。そして、こうした視点を盛り込むだけでなく、いかに計画を実践していくかということもきわめて重要だ。計画は立てることではなく、実行することにこそ意味がある。

幅広い関係者が手を携えて

 昨年12月には、JAグループと共同通信の共催で「持続可能な食と地域を考える~SDGsと食料安全保障の視点から~」と題したシンポジウムを開催した。食や地域に関わる全国町村会、経団連、生協などの団体や東京農業大学の先生方にご登壇いただき、参加者からも質問や意見が出され、議論を深めることができた。この中でも交わされた意見だが、農業者だけで持続可能な食と地域をつくるには限界があり、幅広い関係者が手を携え、農業・農村の実態を国民全体に知ってもらい、支えたいと思ってもらうことが不可欠だ。
 基本計画の議論は、最終的な取りまとめに向け、これから大詰めを迎える。食という生きる要を後世に残せるよう、幅広い方々とも手を携えて、誇れる基本計画策定に取り組んでいきたい。

(「週刊新潮」令和2年2月6日号)

昨年12月、東京農業大学の協力のもと、同大学構内で開催したシンポジウムには、学生など若い世代を中心に約500名が参加した。

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