第50回 地域で輝く50万の「女星」

中家徹のピンチをチャンスに!

中家徹会長によるコラム。「週刊新潮」にて2020年3月まで連載。

 昨年12月、日本の男女格差が過去最悪とニュースで知った。世界経済フォーラムが政治、経済、教育、健康の4分野14項目において、男女間でどれだけの格差があるかを数値化して毎年発表しているが、最新の数値で日本は153カ国中121位だった。不名誉な結果は、女性の労働所得や政治家が少ないことなどが理由だという。政府が「女性活躍推進」を声高に叫んでいるのにもかかわらず、実態が伴っていないことが浮き彫りになった。

 国連の「持続可能な開発目標」(SDGs)には17の目標があり、目標5に「ジェンダー平等を実現しよう」が掲げられている。小欄でも、ご紹介した食料・農業・農村基本法でも、第26条に「女性の参画の促進」が定められている。このように男女格差をなくすことは各国共通の問題であることは明らかだ。

 我々JAグループでもいかに女性が活躍できるかが、地域や組織を活性化させる上で重要な鍵を握る。ほとんどのJAには女性部があり、その数は全国で622組織、会員数は約52万人に上る(2019年7月)。女性部の歴史は、明治期の産業組合時代にまで遡る。当時は婦人会として農村の暮らしの向上や娯楽の充実などを目的に結成された。戦後も盛んに活動し、復興にあたって食生活や衛生環境の改善にも大きな成果を挙げた。近年は地域の子どもたちへの食農教育や伝統的な食文化の継承などに積極的に取り組む。1月22~23日は東京で第65回JA全国女性大会が開催された。「JA女性 地域で輝け 50万パワー☆」をスローガンに活発に意見を交わしたが、女性たちの行動力を頼もしく感じた。

女性が見捨てた組織に未来なし

 世界経済フォーラムが男女格差を問題視するのは、経済成長を妨げるとみているからだ。実はJAの事業にも同じことがいえる。例えば直売所や教育、介護などの事業に女性の視点や感性が活かされると、その事業は大きく成長する。私の地元、和歌山県のJA紀南でも女性の声を反映させようと対話集会を開いているが、女性の意見やアイディアを事業に活かして成功した事例はたくさんある。

 そこでJAグループは女性参画を進めるために、一定割合で女性を割り当てることにした。正組合員30%以上、総代15%以上、役員15%以上という数値目標を決め、すでに全国で6JAが達成した。このうち半分は和歌山県内のJAが占めているが、そうした場に参画した女性たちは大きな力を発揮し、事業を盛り立てている。女性に見捨てられたJAに未来はないのだ。

(「週刊新潮」令和2年2月20日号)

第65回JA全国女性大会には、JA女性組織のメンバーら約600名が参集。活発な意見が交わされた。

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