17色からなるカラーホイールは、国連のSDGs(持続可能な開発目標)のシンボルだ。近頃はビジネスマンの胸にバッジが付いているのをよく見かけるので、見覚えのある方も多いことだろう。
このSDGsの達成に向けた日本政府の実施指針が昨年12月、3年ぶりに改定され、「協同組合」が新しい担い手として明記された。2016年11月には「協同組合の思想と実践」がユネスコ無形文化遺産に登録されている。それまでもSDGsを達成する担い手として位置付けられていたが、日本政府の指針にも協同組合の役割が明記されたことは、我々にとって大きな励みになる。
日本の協同組合がさらに連携を強め、地域で果たす役割や機能の可能性を広げようと、2年前に創設した「日本協同組合連携機構(JCA)」の会長を私は務めている。我が国には農林漁業団体や生協のほかにも、信用金庫やこくみん共済、労働者協同組合(ワーカーズコープ)など、多種多様な分野の組合が存在する。日本には約6500万人の組合員がいて、事業高は約16兆円にも上る。
そもそも協同組合と株式会社では目的が違う。不特定多数のニーズに応じて商品やサービスを提供する株式会社に対し、協同組合は共通の目的を持った人たちがそれを達成するためにつくる相互扶助の組織だ。さらに協同組合は組合員が経営者で、出資者で、利用者でもあるが、株式会社は異なる。両者には違いがあっても、より良い社会を目指す基本姿勢は同じだと思う。
SDGsが行動理念として掲げる「誰一人取り残さない」は、協同組合の精神「一人は万人のために、万人は一人のために」と非常に相似している。そしてSDGsが目指す17の目標の中には、協同組合の思想がちりばめられている。JAグループなら、目標2「飢餓をゼロに」は農業振興、目標3「すべての人に健康と福祉を」では医療事業、目標4「質の高い教育をみんなに」では食農教育など、従来からの取り組みがたくさんある。協同組合が目指すものは、まさにSDGsが目標とする社会と重なるのだ。
目標達成のための行動をJAグループらしく例えるなら、即効性はないが、ゆっくり時間を掛けて効果が表れる有機肥料だと思う。「持続可能」という目標には、すぐに結果が出ずとも諦めずに継続するところに達成の鍵があるように思う。「誰も取り残さない」ために日本の協同組合がさらに結束して前に進みたい。
(「週刊新潮」令和2年3月5日号)
同じ協同組合の仲間である全国森林組合連合会は、国産ヒノキの間伐材により、SDGsバッジを制作している。間伐材を使用しているので環境にもやさしく、まさにSDGsを体現している。