和食には4つの特徴がある。1つ目が「多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重」。南北に長い日本の国土は季節の食材が各地にあり、素材を活かす調理が発達している。2つ目は「健康的な食生活を支える栄養バランス」。一汁三菜を基本とする日本の食事スタイルは栄養バランスが理想的で、長寿や肥満防止に役立つ。3つ目は「自然の美しさや季節の移ろいの表現」。季節に応じて花や葉、器を利用したりして季節感を楽しむ。4つ目は「正月などの年中行事との密接な関わり」。さまざまな年中行事と密接に関わり、食の時間を共にすることで家族や地域の絆を深めてきた。
このように和食には素晴らしい特徴があるが、当の日本では近年米の消費が年々減り続けるなど、和食離れが進んでいるように思う。ご飯を主食にした一汁三菜に牛乳・乳製品、果物を加えた日本型食生活は、健康な体と心をつくる上で極めて重要だ。さらに和食には地域ならではの郷土料理があり、豊かな食文化を育ててきた。
そして世界に誇れる和食のおいしさを支えるのは、食材の質の高さだ。品種改良や栽培技術の向上など、日本の生産者が手塩に掛けて育てた農畜産物や水産物は品質に限らず安全・安心面でも胸を張れる。
今年の夏は世界中からたくさんの観光客に訪れてほしい。日本の風土と環境の下で味わう和食は、海外の日本食レストランでは体験できない感動的な出会いを与えてくれるはずだ。
(「週刊新潮」令和2年3月26日花見月増大号)