第52回 世界の和食に

中家徹のピンチをチャンスに!

中家徹会長によるコラム。「週刊新潮」にて2020年3月まで連載。

 3月下旬から6月14日まで、国立科学博物館(東京・上野公園)で特別展「和食〜日本の自然、人々の知恵〜」が開催予定だ。我々JAグループもJF全漁連(全国漁業協同組合連合会)と一緒に特別協力として携わっているので、たくさんの方にご来場いただいて和食に関心を持ってほしい。

 先日、アメリカ政府関係者の方とお会いする機会があった。彼は海外で和食が人気で、中でも若い人たちの関心が高いことを話してくれた。おいしいだけでなく、健康的な食事であることが、海外の若者の支持を集めているという。

 彼の話を裏付けるように、海外の日本食レストランの数は急増している。外務省と農水省の調べによると、2006年は2万4000店だったが、2019年には15万6000店と約7倍に増えた。2013年にはユネスコが「和食;日本人の伝統的な食文化」を無形文化遺産に登録した。これを契機に同年、和食文化国民会議が11月24日を「和食の日」に、11月を「和食月間」に制定している。

口福を呼ぶ四つの和

 和食には4つの特徴がある。1つ目が「多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重」。南北に長い日本の国土は季節の食材が各地にあり、素材を活かす調理が発達している。2つ目は「健康的な食生活を支える栄養バランス」。一汁三菜を基本とする日本の食事スタイルは栄養バランスが理想的で、長寿や肥満防止に役立つ。3つ目は「自然の美しさや季節の移ろいの表現」。季節に応じて花や葉、器を利用したりして季節感を楽しむ。4つ目は「正月などの年中行事との密接な関わり」。さまざまな年中行事と密接に関わり、食の時間を共にすることで家族や地域の絆を深めてきた。

 このように和食には素晴らしい特徴があるが、当の日本では近年米の消費が年々減り続けるなど、和食離れが進んでいるように思う。ご飯を主食にした一汁三菜に牛乳・乳製品、果物を加えた日本型食生活は、健康な体と心をつくる上で極めて重要だ。さらに和食には地域ならではの郷土料理があり、豊かな食文化を育ててきた。

 そして世界に誇れる和食のおいしさを支えるのは、食材の質の高さだ。品種改良や栽培技術の向上など、日本の生産者が手塩に掛けて育てた農畜産物や水産物は品質に限らず安全・安心面でも胸を張れる。

 今年の夏は世界中からたくさんの観光客に訪れてほしい。日本の風土と環境の下で味わう和食は、海外の日本食レストランでは体験できない感動的な出会いを与えてくれるはずだ。

(「週刊新潮」令和2年3月26日花見月増大号)

海外の日本食レストランの数は調査開始以来右肩上がりを続けている。特にアジア地域での伸びが著しい。

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