2018年10月11日 JA全中定例記者会見(中家会長挨拶)

 本年は豪雨や台風、地震が全国各地で発生しました。改めて被害に遭われた方々にお見舞い申し上げるとともに、1日も早い復旧・復興をご祈念申し上げます。9月末時点での農林水産品の被害額は農林水産省によれば、西日本豪雨で約3000億円、北海道地震で約670億円、台風21号で約250億円となっています。本来であれば多くの地域で、農家の一年の苦労が報われる秋となるはずでしたが、残念ながら今年はそのようにならなかった地域も少なくないのではないかと思います。私の地元である和歌山県でも、特に台風21号ではミカンの木やハウスが倒されたり、柿が落ちたほか、塩害も発生しています。

 これまでもお伝えしていますが、JAは地域に根差した助け合いの組織として、災害の復旧・復興にあたっています。特に、北海道での地震の際は、停電により搾乳できなくなった組合員の牛舎を、発電機を持ったJA職員が徹夜で巡回し、搾乳をしたと聞いています。北海道の108JAのうち、酪農を扱っていないJAを除くほとんどのJAで、そうした対応が行われたと伺っています。職員も被災しているなかでの対応であり、作業にあたられた職員の方々には深く敬意を表したいと思います。また、被害が大きかったJAとまこまい広域やJAむかわでは、組合員間でのコンバインの融通、作業支援や、JA間で協力してばれいしょの選果も行われたとのことです。

 他方、西日本豪雨では10月1日までに、JAグループ支援募金へ2億円が寄せられました。この2億円は本日の理事会で、岡山・広島・愛媛県のJAグループ災害対策本部に贈呈することが決定されました。募金は全国のJAグループ役職員や青年・女性組織、さらにはタイ王国の農業・農協関係者からもいただいています。この場をお借りして、全国・世界からの暖かい支援に、厚く御礼を申し上げます。JAグループは地域に不可欠なインフラとして、一日も早い被災地の復旧・復興に、今後とも全力で取り組んでまいる所存です。

 JAグループの大きな使命は、安心・安全な国産農畜産物を、消費者の皆様へ安定的にお届けすることです。一時的とはいえ、災害により品薄状態になった農畜産物もあったことは、非常に残念でございます。一方で、農畜産物が品薄になると価格高騰ばかりが注目されますが、価格が高騰するからといって、生産者の手取りが増えるわけではありません。品薄になるということは、生産者が種を蒔いても収穫できなかったということです。さらに、ミカンなどの永年性作物は、一度被害を受けると、元に戻るまで相当な年数がかかります。消費者の皆様には、価格高騰の背景には、こうした私たち生産者の苦しみがあることも、ぜひご理解いただければと思います。

 災害が多く発生した一年となりましたが、消費者の皆様に美味しくて安全な国産農畜産物をお届けできるよう、今後とも努力してまいります。また、今般の災害では改めて、食料安全保障の重要性も痛感しました。

 さて、先日、第4次安倍改造内閣が発足しました。まずは、深刻な被害をもたらす災害が多発していますので、その復旧・復興対策と防災対策へ、万全に取り組んでいただきたいと思っています。また、人口減少が進むなかで、食料安全保障を確立し、農業・地方が持続可能なものとなるように、現場の実態をふまえた取り組みを早急に進めていただきたいと思います。農林水産大臣に就任された吉川大臣とも先日面会させていただき、当面の農政課題等について意見交換したところです。大臣はこれまでも重要な農政課題で中心的な役割を果たされており、今後もご活躍を大いに期待しているところです。

 主な農政課題としてはTAG(物品貿易協定)があります。先日の日米共同声明では「過去の経済連携協定で約束した市場アクセスの譲許内容が最大限であること」を「尊重する」と明記されています。政府にはそれらをふまえた結論を得るべく、断固たる姿勢で交渉に臨んでいただきたいと思います。一方では、生産現場に不安の声もあります。これを助長しないよう、政府には交渉過程において、可能な限り情報開示を行うように求めてまいりたいと思います。

 なお、今月から「JAの自己改革に関する組合員調査」がスタートしています。これは、組合員の意思を的確に把握してJAの事業運営に反映することや、正・准組合員との一層の関係強化を目的として行うものです。基本的には今年の12月から、1年をかけて行うこととしていますが、対象となる組合員がきわめて多いことから、一部の県やJAでは前倒しして今月から実施しています。

 協同組合は組合員による自主・自律の組織です。引き続き自己改革に組織を挙げて取り組むとともに、調査で組合員の方々からいただいた意見は真摯に受け止めたいと思います。

以上

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