2020年8月20日 会長就任記者会見(中家会長挨拶)
はじめに、新型コロナウイルスによって影響を受けている皆様、7月の豪雨等で被災された皆様にお見舞い申し上げます。先ほどの本会通常総会において会長に再任されました。改めてその重責を痛感し、身の引き締まる思いです。
さて、この3年間を振り返ると、まずは平成から令和へと大きな時代の節目を迎えました。本会の一般社団法人化もありました。一方で、様々な自然災害が多発しました。今年に入ってからは新型コロナウイルス感染症が発生し、今なお収束していない状況です。
こうしたなかで、JAの自己改革や経営基盤の確立・強化、食料・農業・農村基本計画の見直しなど、様々な重要課題に対応してきました。これからの3年間も引き続き、農業者の所得増大、農業生産の拡大、地域の活性化という基本目標に全力を傾けてまいります。それにあたり、4点ほど申し上げます。
1点目は、不断の自己改革と准組合員の事業利用制限の阻止です。これまで全国のJAが、創意工夫ある改革に取り組み、一定の評価をいただいて、農協改革集中推進期間を終えました。しかし、JAは無くてはならない組織だと、いつまでも評価いただくために、今後も不断の自己改革に取り組みます。
准組合員の事業利用制限は、来年3月末で検討期日を迎えます。すでに昨年の参議院議員選挙の与党公約で、組合員の判断によるとなっていますが、引き続き准組合員の積極的な運営参画に取り組み、関係を強化して評価を得ることで、これを阻止していきます。
2点目は、JA経営基盤の確立・強化、対話運動です。JAが組合員からの負託にこたえ続けるためには、持続可能な経営基盤の強化が不可欠です。現在、金融情勢が厳しいなかで、収益の柱であった信用事業は厳しい情勢が続いており、従来のビジネスモデルを転換する時期です。様々な改善の方策はありますが、現場実態にあったやり方で改革・改善を進めてまいります。経済事業の収支改善や支所・支店の機能再編、デジタル技術の活用などによる効率化を進めることなどは、これから大きな課題になると考えています。
そして、こうした改革を進めていくために最も重要なのが、組合員からの理解です。組合員との徹底的な対話が大切です。先般の組合員調査は結果も大事ですが、組合員宅を訪問して話し合いコミュニケーションを図ることが非常に大きな力となりました。会話することで、お互いの現状把握や課題を認識し、今後の解決策をともに考えることが重要です。現在、新型コロナウイルスにより対話の機会は少なくなっていますが、そうしたなかでも可能な限り機会を設けて、取り組んでまいります。
3点目は、食料安全保障と食料・農業・農村基本計画の実践、国民理解の醸成です。昨今、食を取りまく環境は、非常にリスクが高まっています。このことを皆様に知っていただき、確保していくことが重要です。基本計画も改定されました。改定にあたっては私も食料・農業・農村政策審議会の企画部会委員として参画し、JAグループの思いを伝えてきました。その結果、従来の産業政策偏重から脱却し、地域政策や中小・家族農業に視点を向けたものになりました。また、農業・農村に対する国民理解も必要です。
この基本計画の実践こそが、わが国の食料・農業・地域の行く末を左右するといっても過言ではありません。いかに実践し、成果を挙げるかがきわめて重要であり、同時にその検証も徹底して行います。そして、実践のなかで、一人でも多くの国民の皆様に、農業・農村を支えたいと思っていただけるように、世論喚起に努めます。
4点目は、新型コロナウイルスへの対応です。今後の見通しが立たないなかで、農業やJAにも様々な影響が出てきています。これまでJAグループでは需要喚起などに取り組むほか、政府・与党に対策を要望し、対応してもらっているところですが、今後も現場の要望をくみあげ、万全の取り組みを進めていきます。
さて、昨今の状況から得られた教訓もあったと考えています。
1つ目は、マスク不足がありましたが、過度な国際化・自由化が進展するなかで、国民が消費するものは国内で産出するという「国消国産」の考え方が改めて問われているのではないでしょうか。食は命を育む最も重要なものです。食料安全保障からも一つの力にしていきたいと思います。
2つ目は、東京一極集中の是正です。3密を回避することが感染防止になりますが、東京は3密社会です。この一方で、テレワークなど新しい働き方が定着し、田園回帰・地方回帰への機運は高まっています。分散型社会や地方創生の力になると思います。
3つ目は、総合扶助や協同心が見直されたことです。全国で様々な助け合いの姿が見られます。協同組合の精神は「一人は万人のために、万人は一人のために」です。これは国連の定める持続可能な開発目標(SDGs)にも通じます。
新型コロナウイルスの一刻も早い収束を願っていますが、今申し上げたような教訓も生かしていかなければならないと考えいています。
まだまだ課題は山積しています。農協運動に携わってきた半世紀の集大成として、皆さんのご指導も賜りながら、全力で取り組んでまいります。
以上