後継者対策 - JA紀南

農業を魅力のある職業に

 JA紀南管内における販売農家数は、国の農林業センサス(5年ごとに集計)によると2015年で2,751戸と、2000年に比べて3割以上減少している。年齢構成については約7割が60歳以上で高齢化が顕著に表れている。就農人口の減少は農業の生産力低下に直結するため、後継者対策は喫緊の課題だ。JAでは平成28年度策定した「第4次中期経営計画」や「第2次農業振興・再生計画」にも重要項目として掲げ、担い手を支援する具体的な取り組みに着手している。
 JAには従来から地域農業の担い手育成対策として、「新規就農者奨励制度」がある。一年かけて農業技術や経営の講座、優良農家の視察などの研修を行う。併せて同世代の仲間づくりと情報共有のため、青年部や部会への加入も促している。
 今年度からは「農業所得向上対策支援事業」のメニューの一つに、担い手が園地の規模を拡大する際の助成措置を設けた。「農地を守る」という意味合いも兼ねていることから、農地流動化の事業とも連動した取り組みとなっている。
 事業への申し込みは、想定をはるかに上回る申し込みがあったため調整が必要となったが、「支援のおかげで農地を広げる決断ができ、意欲も出る」といった声も聞かれる。
 行政との連携も進めている。今年7月、田辺市が「紀州田辺新規就農者育成協議会」を設立。先進農家やJAが参加し、就農希望者をより実践的な農業研修先となる農家と結び付けるのが目的だ。このほか県や国においても担い手に対する支援事業がある。
 ただ、JAや行政による支援策だけでは、根本的な担い手不足問題の解決とはならない。農家からも「たとえ後継者がいても、農業に魅力がなければ就農してくれない」との声が多く、いかに農業を魅力的な職業として発信していけるかも大きな課題だ。

担い手のために実施している新規就農者セミナー

販売力強化や支援事業の充実も

 新規就農者が成果を出している事例もある。就農6年目となる田辺市中三栖の濵野孝人さん(43)は、故郷であるとんだ地区で、レタスやトウモロコシを主に栽培する。全く知識も経験もない中でのスタートだったが、「元々食に携わる仕事をしていたので農業に興味はあった。高齢化が進んでいるのは知っていたが、需要が減っているではないので、絶対に儲かるとの夢を持っていた」と話す。
 7月から8月にかけては端境期となるため、作目をJAの販売担当と模索し、一昨年から新たに露地花のケイトウに挑戦。2㌃の作付けから始め、今年度は15㌃まで拡大して収入アップにつながるなど着実に実績を上げている。
 濵野さんは「気象条件が毎年違うので、やり方を考えるのが楽しいし、飽きてこないのが農業の魅力。20年後もそう思っていると思う。やってみたいという若い人もいるが、どうすればいいか分からない。JAには生産法人を立ち上げるなどして担い手の受け皿を広げてほしい」と要望する。
 JAは自己改革の基本目標として、農業者の所得増大を掲げており、そのためには販売力強化はもちろん、担い手支援事業の充実も重要だ。しかし、後継者を今後増やしていくためには、濵野さんのような「儲かる」「やりがいがある」といった魅力の発掘もJAには求められている。

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