会長メッセージ

一般社団法人 全国農業協同組合中央会 代表理事会長 中家徹

12月の会長メッセージ

今年最後の定例記者会見に合わせてまとめた「農業・農村・JAに関する5大ニュースをご紹介しながら、この一年を振り返りたいと思います。 第1位には「食と農のリスクが顕在化」を選びました。
そのリスクとは、先進国で最低水準の「食料自給率」、農業者や農地など「農業生産基盤の弱体化」、そして日本や世界で「多発・激甚化する自然災害」、「世界的な人口増加」、「国際化の進展」の5つです。
ウクライナ情勢やコロナによる物流の混乱、急激な円安により、さらにリスクは増大し、顕在化しました。生活に身近な食品の値上げは2万品目を超えています。また、肥料・飼料・燃料など営農に欠かすことのできない資材価格は過去最高水準まで高騰し、生産現場はかつてない危機的な状況に直面し、正念場が続いています。

そこで、第1位に関連し、第2位には「食料安全保障の再認識」を選びました。政府においても「食料・農業・農村基本法」の検証・見直しに向けた議論が本格的に始まりました。基本法制定から20年以上が経過し、わが国の食料・農業・農村をめぐる環境が大きく変化するなか、将来にわたって、国民の安全・安心を守るため、国内生産の増大を基本とした、万全な食料・農業・農村政策の確立が不可欠です。
今後、JAグループ各組織でも議論をすすめ、我われの 考え方について、農水省の「基本法検証部会」などでの発信や、例年5月にとりまとめる政策提案にも反映してまいります。

第3位には「グループ挙げて取り組んだ『国消国産月間』」を選びました。本年は、これまでの情報発信からさらに一歩踏み込んで、10月16日の「国消国産の日」を中心に、10月を「国消国産月間」と位置づけ、国産農畜産物を手に取っていただくきっかけづくりとなる取り組みをJAグループ一体となって展開しました。
全国約1,500のJA直売所におけるキャンペーンをはじめ、JAグループ各組織がそれぞれの工夫のなかで、様々な手段を活用した情報発信をすすめるとともに、「JAタウン」を活用した「国消国産・送料無料キャンペーン」では、多くの消費者の皆様に国産農畜産物を選んでいただくことができました。消費者の皆様に、食料を生産する農業・農村を「支えたい」、「応援したい」と思っていただけるよう、今後も総力を挙げて情報発信をすすめてまいります。

第4位は、「各地で対話型イベントが再開」を選びました。残念ながら、コロナ禍の終息には至っていませんが、感染防止対策を講じたうえで、JA祭や体験イベントなど、秋の収穫を祝う行事が各地で開催されました。
地域での交流が再び始まっていることは大変喜ばしく、こうした取り組みを通じ、地域に根差した協同組合として、組合員や地域住民の声を十分ふまえた組織運営をすすめてまいります。

第5位には「和牛全共の開催」を選びました。10月6日から鹿児島県で、5年に一度の和牛オリンピックである「全国和牛能力共進会」が開催されました。冒頭申し上げましたとおり、飼料価格の高騰により畜産経営にも深刻な影響が出ているなか、逆境を跳ね返すべく、過去最多の41道府県から438頭が出品され、生産者の日々の努力が報われる大会となりました。
酪農においては、コロナ禍以降、需要の低迷が続いており、さらに、これから迎える年末年始は、学校給食向けの牛乳が停止するなど、例年、需要が停滞する時期となります。JAグループは関係機関と連携し、消費拡大など需要喚起対策をすすめていまいりますが、引き続き、皆様におかれましても、積極的に牛乳・乳製品の情報発信にご協力いただきますようお願い申し上げます。

本年の5大ニュースは、食料・農業・農村を取り巻く危機的な状況を反映したものが多く入っておりますが、一方で、国内で農業生産することへの期待や、地域を牽引する農業生産者の活躍の姿もみられ、こうした前向きな 取り組みをJAグループとしても精一杯、後押ししてまいります。 そして、来年も「国民が必要として消費する食料は、できるだけその国で生産する」という「国消国産」の実践に向け、JAグループはあらゆる役割を発揮してまいります。

令和4年12月8日 JA全中定例記者会見より

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