現在、わが国の食料安全保障を考えるうえで、大きな転機を迎えています。
国連食糧農業機関(FAO)が公表した5月の世界の食料価格指数の穀物は「173.4」と過去最高を記録するなか、国内の食料品価格も値上げが続いています。
コロナ禍や国際情勢の変化により「食を取り巻くリスク」が顕在化し、日常的に消費する食料の大部分を海外からの輸入品に依存しているわが国とって、「食料安全保障の強化」は「国家の喫緊かつ最重要課題」となっています。
こうした状況のなか、JAグループでは、関係団体とも連携し、国産麦の増産に向けた取り組みや、米粉の利用拡大をふまえた米消費拡大の展開など、食料の安定供給の役割を発揮すべく全力を挙げて取り組んでいます。
さらに、生産資材においては、燃料・原材料、配合飼料などの高騰が続いており、JAグループとして、全農を中心に肥料原料等の調達先の切替えとともに、飼料用米や子実用とうもろこしの作付け推進など、最大限対応しておりますが、秋肥の価格が大幅な値上げとなり、生産現場では不安の声が広がっています。
国内の生産基盤や資源を有効活用しながら、資材生産の安定確保などに全力を挙げてまいりますが、この難局は、生産者の努力だけでは乗り越えることが困難です。
この危機的な状況を国民の皆さまにご理解いただき、共に持続可能な食料や農業の在り方を考えていただければと思います。
今月7日に閣議決定された「骨太方針」において、外交・安全保障や経済安全保障の強化などとならび、「食料安全保障の強化」が単独の柱建てとして、大きく位置付けられました。
JAグループは、国民が必要として消費する食料はできるだけ、その国で消費するという「国消国産」の考え方とその意義等について、国民の皆さまに、よりわかりやすい、具体的な情報発信をすすめ、国民の皆さまの理解を得て、「食料安全保障」の確立に向けて、牽引役としての役割を担ってまいる所存です。
さて、今月は「牛乳月間」です。牛乳月間とは、国連食糧農業機関(FAO)が6月1日を「世界牛乳の日」に定めたことに関連して、わが国でも定めているものです。
生乳については、これまで安定した生産・供給のための様々な取り組みをすすめている一方、コロナ禍による業務用需要や家庭消費の回復が遅れており、脱脂粉乳の在庫量は過去最多を更新し続けています。
消費者の皆さまをはじめ、業界一体となった取り組みなどの結果、現時点で処理不可能乳の発生は回避できているものの、引き続き、生乳需給は楽観視できない状況です。
JAグループは、関係団体と連携し、子ども食堂等への無償提供や、販売促進などにつながる情報発信を通じて、引き続き、牛乳の消費拡大に取り組んでまいります。
6月9日 JA全中定例記者会見より