はじめに、6月からの一連の大雨により、全国各地で多くの被害が発生しております。被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。
まず、食料・農業・農村基本法の見直しについて、6月、政府でのとりまとめがなされ、7月14日から、全国11か所での地方意見交換会が開催されております。
私も可能な範囲で参加予定としておりますが、国民の皆様にもより一層、興味・関心を持っていただけるよう、さらなる情報発信と丁寧な議論をお願いしたいと考えております。
JAグループはこれまで、政策提案をもとに、政府・与党への働きかけを行ってまいりましたが、引き続き、わが国の食料生産が持続可能なものとなるよう、必要な対応をすすめてまいります。
さて、本日の定例記者会見が、私の最後の会見となります。全中会長として6年、コロナ禍により開催できなかった時もありましたが、これまで計68回、いつも多くの記者の皆様にご出席をいただき、心より感謝申し上げます。
私は、第15代の全中会長を務めてまいりました。この6年間は、農協運動に半世紀にわたって携わってきた集大成として、粉骨砕身、全中の事業・組織運営にあたってまいりました。
振り返れば、相次ぐ自然災害に加え、新型コロナウイルスや、ロシアによるウクライナ侵攻など、未曾有の困難が続きましたが、農業とJAの未来を拓くべく、組合員やJAなどの会員組織と、「協同の力」の結集により、確かな歩みをすすめてこられたものと思っております。
その象徴的なものとしては、「自己改革の進化」があります。農協改革後、組合員調査の実施など、組合員の声をふまえた自己改革に、組織をあげて、徹底して取り組んでまいりました。
農業者の所得増大や地域社会の課題解決など、全国各地のJAでは着実な成果をあげており、今後もJAグループは、農業と地域にとってなくてはならない組織であり続けるため、「不断の自己改革によるさらなる進化」を目指してまいります。
そしてもう一つは、「国消国産」に関する取り組みです。全中会長に就任して以降、常々、食料安定供給リスクについて、発信を続けてまいりました。そして、「国民が必要として消費する食料は、できるだけ、その国で生産する」という「国消国産」を発議しました。
JAグループのキーメッセージとして、食料安全保障や食料自給率向上などの重要性を、消費者の皆様にご理解いただく際、「国消国産」を活用しており、世の中の関心は少しずつ高まりをみせています。
基本法の見直しも重要局面が続くなか、農水省の審議会や、政府・与党への要請などで、JAグループを代表し、生産現場の声を発信し続けてまいりましたが、国内農業生産の増大を基本に、今こそ、万全な食料・農業・農村政策の確立と、再生産に配慮された適正な価格形成の実現が必要です。
他にも様々な事業・組織運営にあたってまいりましたが、その拠り所してきたものが、「対話」です。従来の会議などとあわせて、全中会長として初めて、副会長と協力して、全都道府県の中央会会長やJAの組合長などに対し、対話活動を行いました。
また、日々の業務にあたる全中内においても、役員や幹部職員だけではなく、これも全中会長としては初めて、会長室内で若手職員と少人数ずつ、胸襟を開いた意見交換を20回以上、行ってまいりました。
さて、農協運動の集大成であるこの6年間には、改めて、協同組合として、組合員や組織が結集することが、何より大切であることを実感いたしました。
農協運動の素晴らしさを教えていただいた、恩師である第4代全中会長の宮脇朝男氏は、「全中会長は最前線で翻っている軍旗である」という言葉を残されました。
この言葉をかみしめながら過ごした日々でありましたが、来る8月18日には、新会長にその役割を引き継いでまいる所存です。
令和5年7月20日 JA全中定例記者会見より