もう早いもので、年末が近づいてまいりました。令和6年を振り返ると、1月に石川県の能登半島地震があり、豪雨や再度の大きな地震が発生し、私も被災地に3回ほど伺い、想定通り復旧が進んでいない状況を目の当たりにしています。夏場は記録的な高温で、人・作物にとって異常な状況であり、また、台風はもちろん、一日当たりの降雨量が一か月に匹敵する豪雨災害も発生しました。さらに今年は、総理大臣の交代と衆議院総選挙もあり、振り返りますと、多くのことがあって年の瀬を迎えているのだなということを改めて感じる次第です。
12月5日は、令和6年最後の記者会見となりました。令和5年に引き続き、私が選んだ「農業・JAグループに関する5大ニュース」を紹介しながら、この一年を振り返りたいと思います。
第1位には「改正『食料・農業・農村基本法』の成立」を選びました。「食料安全保障の確保」が目的に加えられたことをはじめ、「適正な価格形成」の実現につながる記載や、「多様な農業者の位置付け」など、JAグループが現場から積み上げてきた声が、概ね反映されることとなりました。
四半世紀ぶりの改正基本法の成立によって、我が国農業は、歴史的な転換点を迎えております。今後は、改正基本法に基づき、将来にわたり食料安全保障の確保がはかられるよう、「新たな食料・農業・農村基本計画」の策定を通じ、施策の具体化と、その裏付けとなる予算確保が極めて重要となります。
こうしたなか、全中は、次期3カ年のJAグループの実践方針を決議するため、第5位に選んでおりますが、「第30回JA全国大会」を開催しました。JAグループは、原点である「組合員・地域」とともに、「協同活動と総合事業の好循環」を通じて、地域の課題や実情などに応じた戦略を策定・実践し、日本の「食」と「農」を支え、豊かなくらしと活力ある地域社会の実現を目指してまいります。
第2位には、「『適正な価格形成』の重要性高まる」を選びました。ウクライナ情勢や急激な円安により端を発した、肥料・飼料・燃料などの営農に必要不可欠な資材価格の高騰・高止まりは、依然として続いており、まさに生産現場は正念場となっております。一方で、令和6年は夏の端境期に米が一部店舗で品薄状態となりました。現在は、各地で新米の収穫・出荷が進み、品不足は解消されましたが、過年度と比較し、米の販売価格は上昇しております。我々生産者やJAグループは、持続可能な生産を実現するため、コスト増加分を販売価格へ反映していかなければならない状況にありますが、販売価格が上がり続ける状況を望んでいるわけではありません。
多くの消費者の皆様に、自分たちが生産した農畜産物を召し上がっていただきたく、私たちは「国消国産」の考えのもとで、「適正な価格形成」の実現を目指しています。様々な物価上昇が続く状況にありますが、JAグループとしては、生産者への農畜産物の生産にかかる支援と、消費者の皆様にご理解いただく取り組みについて、引き続き、努力を続けてまいります。
第3位には、「相次ぐ自然災害の発生」を選びました。能登半島における地震や豪雨など、令和6年も大規模な自然災害が発生しました。大変残念なことに、この一年に限らず、毎年のように自然災害に見舞われる状況が続いております。
第4位に選びましたとおり、令和7年は「国際協同組合年」となります。自然災害のような危機の時にこそ、「協同組合の精神」、「助け合いの心」は大きな力を発揮します。JAグループは復旧・復興に向け、被災地の声をふまえながら、引き続き、あらゆる取り組みをすすめてまいります。また、国際協同組合年については、先日、インドでIYCのキックオフイベントが開催され、大きな盛り上がりを見せたところです。キックオフイベントには、私も参加させていただきました。ICA(国際協同組合同盟)は、1895年に設立され、国連の協議資格を有する世界最大のNGOです。世界112か国300万組合、10億人の組合員を有しています。当日は約3,000名が世界各地から集まりました。世界の協同組合の仲間とともに、「協同組合の精神」を広げる絶好の機会として、様々な取り組みをすすめてまいります。
以上、私が考える令和6年の5大ニュースとなります。番外編といたしまして、この12月1日、全中が創立70年を迎えました。昭和29年に全中・都道府県中央会が生まれ、令和6年12月1日で70年になりました。この70年の間に、農業・JAグループは様々な課題に直面しながらも、「協同組合の精神」のもと、組合員、地域の皆様、役職員が力を合わせ、それを乗り越えてきました。その中で、全中は代表・総合調整・経営相談機能を遺憾なく発揮してきたという自負がございます。これから100周年、さらにその先に向け、引き続き、全中が機能発揮し、消費者の皆様に国産農畜産物を安定的にお届けし、また、農業・地域の発展に貢献していく決意をしたところであります。
令和6年12月5日 JA全中定例記者会見より